ちょうど良い手作業量

 梅ジュースを作りました。

去年は梅酒を漬け、いよいよ皆で味わう予定なのですが、お酒を飲めない人も結構いることに今更気づき、今年は梅ジュースにもチャレンジしてみることにしました。

 

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コクがあるお砂糖の方が好みなのでその延長できび砂糖で作ってみる事に。

 

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 セミナーの最中にキッチンで 4Fスタッフの藤山さんと準備開始。

お水に漬けておいた梅のを取り出し、ヘタの部分をくるりと竹串で取り1つ1つ丁寧にお風呂から出た小さい子供をタオルで拭いてあげるように梅を拭いてあげます。その時も梅の良い香りがします。

 「セミナー中にこういう手作業イイな。」と藤山さん。

 

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 ふと彼女の言葉で考えたのは日常のちょっとした手作業は人間にとってやはり必要なこと、というより喜びを与えてくれる仕事なのではないか?

台所で空豆の皮をむく作業が楽しい、さやえんどうのスジをとるのが楽しいとか。その作業が食べたり飲んだりその後の楽しみになる物なら作業の楽しさは増すはずです。

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そして必要な量だけ自分の手で作るということもその楽しさを引きつける重要な点な気がします。

こういった作業が毎日超大量に、なんてなると.....「こんなやってられない」

ちょうどいい量だからこそ、ほどよく楽しいと思える...のでは...。

 

量産の世界にいるせいか、そんなことを考えてしまいました。梅酒工場だったらどうや作っているのだろう、そもそも季節物の梅が1年中あるって…すぐ物は手に入る世界に住んでるのにその裏側の事は知らない事だらけです。

 

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*虫?っていわれた

 工場で作られる梅ジュースや梅酒も美味しいけど、自分で調達して、作り方調べて、しかも梅と砂糖の化学変化の工程を見られるのはとても創造的。

作ってその場ですぐ口ではなく、時間を置いて待つ。この「時を置く」という工程があることでグッと魅力が増します。

時間は目に見えませんがこういう変化を見ると何事も毎日刻々と変化という事は起こってるんだろうな、と改めて思い知らされます。自分は果たして良い方向へ日々変化しているのでしょうか…。

 このブログを書いている最中も社員が梅ジュースの瓶を眺めて「もう液体になってきてる!」と観察してくれています。

 日々量をこなし、多忙な製本工場の中のささやかな楽しみになれば幸いです。

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*約1週間後の梅ジュース 

 

Factory4F タブチ http://factory4f.com/

 

 

 

 

 

 

有機的な村、篠原紙工

今週もそろそろ終わりですがみなさんはどのような1週間でしたか?

Factory 4Fのある篠原紙工では先日、工場見学で小学校3年生から6年生のお客様をお迎えしました。みなさん断裁の迫力、そして0.3mmの厚さの紙が切れることに『ワーっ!』と興奮していました。先生方からも『この機械(断裁機)いくらなんですか!?』そんな声もありにぎやかな時間でした。

途中、自分の思うようにいかず他の生徒にちょっかいを出して、その場から逃げてしまう生徒さんもいたのですが、自分が子供の頃を思い出すとそんなことをしたら先生に怒られるという恐怖でいっぱいでグッとこらえる子の方が多かったような気がします。

自分が大人になりいろんな経験をして、いざ子供を見ると、一人一人育ってる環境、持ってる性質も違うのだから突然教室を抜け出したり、泣いたり、怒ったりする子がいても当然だよな、なんて思いながらその子が機嫌を直して工場へ戻って来ることを心の中で願ってました。

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*4F 本の帯びかけ作業、段ボールに埋もれてます

 そして篠原紙工ではこの2日間、インターンシップの高校生も来ていていました。受け入れる側としてどうしたいか、どういうことを学生さんに学んで欲しいか、というのをきちんと考えないと、ただ来ているだけの高校生になってしまいます。実は会社としても受け入れ態勢がまだ未熟ですが、まずは篠原紙工という会社での2日間が楽しかった、と思ってもらえれば嬉しいです。

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*1F 突き揃え作業(紙を揃える)、なかなかいい具合でした 

高校生、ということは16-18歳、今の私の年齢ではそんなに頻繁に交流できる世代ではないのでこの際に混ざって話してみようと思い、お昼に彼らのテーブルにお邪魔しました。彼ら自身もお互いクラスが違うのでちょっと緊張の空気がある様子でした。聞いてみると軽音楽部、サイエンス部に所属していることなどの話題が出て生徒同士でも少し打ち解けた?ようでしたが自分のありきたりな問いかけ(部活、好きな学科…とか)で質問力の無さをしみじみ…。気の利いた面白い質問ができる人間になりたいです。

 

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*2F 篠原紙工での新人、岩屋くん、「話しかけたくても作業の流れで話しかけてあげられない...」と。優しい先輩です。

彼らはとても礼儀正しく、少し緊張している様子が年上の私からしたら謙虚な姿にも見えますが、心ではどんなこと思い、考え、今この時代の高校生を生きてるのかな?と考えてしまいました。高校2年生だったら今の私であれば思いもしないようなことを考えたり、面白いアイデアをもっていたり、はたまた悩んだりしてるはずです。

 

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*ラップ巻きに挑戦。これキレイに頑丈に巻くの難しいんです

 印刷物、デザイン、機械に興味があるという理由で篠原紙工を選んでくれたそうですが、工場の現場で働いたことが刺激になったのであれば嬉しい。この先この経験がまたどこかでよみがえるかもしれないし、そのまま忘れてしまうのかもしれないけど目に見えない小さな縁があればいいな。

 4Fでお昼の片付けをしながら、ふと、仕事をしているみんなを見るとなんだか篠原紙工はいろんな年齢、立場、役割をしている人がいて面白い風景だな、と思いました。そして一瞬、仕事とか全く抜きにして幸せな光景にも見えました。何でしょう...不思議です!

 

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 *4Fワークショップでおなじみの中村麻由美さん、すっかり大きなお腹になりました!

 今日はインターンの10代の少年、少女。20代の青年社員、中には本就職に迷う青年も。そして最近増えた転職組30代、はたまたお腹に赤ちゃんがいる妊婦さん、しっかり家庭をもった40-50代、長年働いて技術がある長老たち。

 まるで小さな村のようです。

 いろんな世代がいると仕事を回す時に大変なこともあるのですが、人が混ざってその世代ギャップの中でもまれながら会社を動かしていく、というのもなんだか有機的な感じで面白いことなのかもしれないと思いました。この村(会社)の人々がそれぞれ本来持った能力を出せる会社にしていきたいです。

 最後に、

本の帯びかけ作業した高校生、一つ一つ手作業な事に驚いて「これからは帯を捨てない!」と。ありがとうー。私はきれいに折って栞にしてます...。みんなどうしてる?

 

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紙とは関係のない話

Factory 4F 静かな日々が続いておりますが営業、折り、中綴じ、と各部署でのちょっとしたバタバタは常日頃。スムーズに仕事が進みますようにと見守りながらFactory 4Fのこと、会社のこれからを考えております。

 

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*4Fバンダナの洗濯をしたのですが、ここまでオレンジだと目がやられます。

 

そして先日は4Fes!以降の初のファクトリーツアー。台湾からのお客様がいらっしゃいました。どうやら台湾で弊社の「いいかげん折り」をある日本人デザイナーさんの個展で見つけてファンになってくれたそうです。近いアジアからのお客様がもっと増えれば仕事の枠も広がって面白くなりそう、とちょっと期待してしまいます。

 

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*お客さんの感動、私もこの会社を見学した際はそうだった...はず

 

ファクトリーツアーに来てくださったお客様が感動してくださるのは大変嬉しいのですが、正直なところ自社の紙加工に慣れてしまっているというのも正直な意見。喜ぶお客さんには心刺激されるのですが、新鮮さをどう自分の中にキープしたら良いのか迷うときがあります。しかし、これはほっといたらいけない問題。ただただつまらない仕事をしてしまう可能性があるからです....。

 

紙加工と全く関係ないことをする、紙関係と離れた世界をみる、というのも大事だなぁ、と思います。あと、自分が感動する側の経験をする、とか。ここ最近インプットの数が少ないのかもしれませんね。

 

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*地元野菜のコーナーで。とぐろをまいたキュウリです。

 

今までこのBlogで紙とは関係ない私の思うままのことを勝手に書かせてもらっていましたが心のどこかで紙加工のFactory 4Fだから工場、紙、本、のことを書かなければイケナイはず。と思っていました。でも今よりも、さらに、気楽にこのFactory 4FのBlogを続けて行こうか、と思います。

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4Fes! ありがとう

みなさん、こんにちは。Factory 4Fの タブチです。

4Fes!が終了して約1週間が経ちました。改めて、お越しいただいた方々本当にありがとうございました。工場は気の抜けたような感じがした日もありましたが、また私たちの日常が戻ってきました。4Fes! 後の日常に何か変化はあるでしょうか?今日のお話はちょっと固い内容かも...ですが!手元にある写真に少し裏話も付け加えてお伝えしますね。

 

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*写真の様子は前夜祭、『校正ライブ!』というマニアックなイベントに50名以上のお客様...何が起こるか分かりませんね!その後も1F、2Fは夜中近くまで準備でちょっとみんな狂ってました。

 

4Fes!が始まる前は正直なところ、どれくらいのお客さんが来るのだろう…シーンとしたイベントになってしまったら...と不安な気持ちもありましたが前夜祭も含め計300名以上のお客様にお越しいただき、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

 

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*装飾の準備。一本、一本、柱と柱の間に糸を貼付ける作業。想像できますでしょうか?根性あります彼。

 

 最終的なお客さんの顔が見えにくい私たちですが4 Fes!に来てくれたお客さんの反応を見ると私たちの普段の仕事でも見えないところで小さな感動を与えてられるのだ、ということがこの目で確かめられた気がします。私は受付で待機していたのですが、帰る際に『想像以上に楽しかったです!』『前から気になってた会社です。来れてよかった。良い会社ですね!』など多くの嬉しい言葉をいただきました。

 

 私の中ではFactory 4Fはそんなに知られてないはず、一般的にどういう見方をされているのだろう、とぼんやりしていたのですが、もはやそれではいけない!と思わせてくれるイベントでした。どうして目に見えることでしか判断できないのでしょうね。もっと自信をもって堂々としてよく、むしろそうしないとお客さんに失礼だなとさえ感じました。(ただ一つ、イベント慣れしていないことも大きいかもしれませんが。)

 

 

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*『レッツ梱包〜!』の練習風景。山田クン(断裁担当:左)が司会をする際の豹変ぶりに人って分からないなぁ、と思いました...才能。この風景の面白さが伝えられず無念。

 

去年はオープンということもあり、社員はいったい何をどうして良いのやら?会社は何をやろうとしているのか?など本当にいろんな声、協力、楽しみ、そして批判の声もある中、まるで台風のようにイベントを行いましたが、一種の Factory 4Fのうっすらとしたビジョンを作りあげたのだと思います。

 

今年は2回目、篠原紙工の社員も入れ替わりもあり、新しいメンバーも協力してくれて本当にいろんなアイデアが出てきました。そして昨年よりいろんなことがかなりスムーズに進みました。これは社員一人一人が少しずつ変化して今のFactory 4F(篠原紙工)の流れにのって来てるのかな?とも思います。

 

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 *この写真は前夜、帰る前に撮影。ゲーム『ハンドリフト操作』の準備ですが駐車場に並べられたパレットこれはかなりシュールです。近所の人にとっては篠原紙工が何やってる工場か謎で当然です。

 

『集団の成長』ということを考えます。企業の成長、というと大袈裟に聞こえるかもしれませんがオープンから1年。内部の人間のいろんな化学反応によって会社全体が少し前進したような気がします。組織にいると息苦しいことも多いですが、お互いがお互いの鏡になって成長させてくれる絶好の場所。自主性をしっかり持った強い組織になりたいでものです。また日常を愛おしみながら日々精進でいきたいと思います。

 

 以下写真を少し紹介しますね。

 

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 *『4Fes!』のスリップマット(レコードプレイヤーに敷く物)紙で作りました!全国のDJ、My スリップマット作りたいですかね?

 

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 *大学堂さん、なぜ来たと思います?実は毎週火曜日の20:00になるとあの音楽をならして来るのです。社員の柳さん(中綴じ担当)は常連。『試しに呼んでみよう!』という社員の声から呼んでみたら本当に来てくれた。やってみるもんですね。私も初めて食べたけど美味しかった!ちなみに、あの音楽、先代が作って歌ってる?CDは買えるそうです(¥2000くらいかな?)おそらく誰も買わないので突然言うとホットドック作ってる人の方が知らない可能性もあるので注意。

 

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 *常連の本人、柳さん(中綴じ担当)

 

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*『レッツ梱包〜!』アンケートの中でも何気にすごく人気のあったイベント。来年はもっと盛上げてやるのも良いかも。 一番右、宮林さん(中綴じのボス)写真の様子だと1番に梱包を完了

 

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*和綴じの穴を開ける機械、無事に翌週、新しい主のところへ旅立って行きました

 

 

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*社長

 

 

 

印刷のいろはフェスタ2016

土曜日の朝、おはようございます! 4F編集室の沼上です。

けさは大田区鵜の木できのう・きょうと開催中の印刷フェス「印刷のいろはフェスタ2016」をご紹介◎

 

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会場は、東急多摩川線鵜の木駅から線路沿いに歩いて3分ほどのところにある印刷会社の金羊社さん。

マスコットキャラクターの顔くんがお出迎えしてくれます。

 

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会場に入るとまっさきにあるのが、「いろはマーケット」。

お菓子にコーヒー、いろいろなクリエイターの個性的なグッズなどがずらり。

 

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Factory 4Fもブース出展しています!

出来たてほやほやの4Fes! 2016のチラシも絶賛配布中♪

(ぜひ遊びにお越しください◎)

 

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4Fブースでは4F BOXも販売してます。

ブースがお隣になったイラストレーターの中山信一さん(中小企業というユニットで音楽活動も!)に、顔くんのイラストをトースターポップに書いていただきました◎

飛び出す顔くんと中山さん。

 

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こちらが会場案内。

工場ツアーやいろいろな体験イベントが用意されています。

(工場内はあいにくの撮影禁止なので、ぜひご自身の目でご覧ください!)

 

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今年の目玉は、この「印刷工場体験ツアー」!

紙製のCDジャケットをつくる体験型アトラクションです。

 

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断裁機や印刷機の大型模型をくぐったり通り抜けたりしながら、印刷物の気持ちになって(?)断裁→印刷→加工の工程を体感し、学んで、紙ジャケを作っていきます。

 

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活版印刷や。

 

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スクリーン印刷や。

(ここで使っているインキは、蓄光インキという光を吸収して暗闇で光るインキです)

 

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箔押しや。

いろいろな印刷・加工を体験できます。

 

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各工程をまわって印刷したものを自分の手で組み立てて……

 

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こんな紙ジャケットが出来上がりました!

 

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こちらの「蛍光わーるど」もおすすめ。

ブラックライトで妖しく光る蛍光素材の世界をたのしめます。

 

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蛍光インキはもちろん、果物の断面も光っちゃいます。

 

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いろはフェスタのチラシも蛍光インキが使われた部分がぼわっと光ってちがった表情がたのしめます。

4Fes! 2016のチラシも蛍光系のインキが使われているので、ぜひブラックライトの下での変化をお楽しみください!

 

このほかにも、モリサワさんの協力による「フォント作成体験」や大型の活版印刷機(プラテン)の印刷実演、世界の絵本が楽しめる「ワールドライブラリー」など、印刷の面白さを体験できるイベントが盛りだくさん◎

お友達や仕事仲間と一緒でも、お子さんのいるファミリーでも、もちろんお一人でも、きっとたのしめるイベントです。

ぜひ遊びにお出かけください。本日17時までです!

 

www.irohaten.com

紙箱の宇宙は広かった! 〜 紙器研究所「箱覧会2016」

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こんにちは。4Fブログをご覧の皆さま、はじめまして。

4Fの編集室長をしている沼上純也(ぬまかみ・じゅんや)と申します。

(実は、Factory 4Fには「4F編集室」という制作チームがあるのです!)

Factory 4Fももうすぐ2周年ということで、この4Fブログにもこれまでとは違った風を吹き入れるべく、これからちょこちょこ記事を書いていきたいと思います。

お見知り置きのほど、お願いいたします!

(マネージャー・タブチも引き続き執筆しますので、タブチファンの皆さんもご安心を!)

さて、1回目の記事から4Fと直接関わりのないことでアレなんですが、今回ご紹介するのは3331 Arts Chiyodaで本日まで(!)開催中の「箱覧会2016」。

shikiken.jp

かみの工作所テラダモケイなどでも有名な “紙加工界の雄”・福永紙工さんが1年前に立ち上げたプロジェクト「紙器研究所」の第1回発表会です。

オフィシャルサイトによると、紙器研究所はこんなプロジェクトとのこと。

「紙器研究所」は紙を使った器を研究し、社会に貢献することを目指す活動。紙の加工と印刷を手がける工場を軸に、紙を立体化することに執着するデザイナーが集まり、紙器を様々な側面から継続的に研究しています。 分類、展開図、構造、組立方法などから、紙器の可能性を可視化し、設計や製造方法を追求しています。

会場につくと、こんな感じでポスターと(箱の)抜き型が出迎えてくれます。

「箱の宇宙を覗く4日間」というサブタイトルに期待も膨らみます。

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会場内はというと、まさしく箱の宇宙!

紙の「箱」についての基本的な作り方の説明にはじまり、箱の形状についての考察(これをマッピングした図がまた興味深いです)、さまざまな箱の可能性を探ったプロトタイプの展示がずらりと並びます。

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なかでも気になったのは、さまざまな箱のバリエーションのプロトタイプ。

基本となる箱(いわゆるフツーのフタのできる箱です)に、切り込みや折りスジなどを足し引きすることで、まったく印象が異なる箱が組み上がってしまうのです。

たとえばこんな感じで、遠目にはまったく同じ展開図に見えます(近づくと切れ込みやスジが見えます)。

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こんな箱のバリエーションが、展開図と組み上がりをセットにして50例も展示されています。

しかも、基本的な紙箱をつくる機械で加工が可能(専門的に書くと、「基本的なグルアー設備で胴貼りが可能」)で、なおかつ中にモノが入りフタが開閉できるという制約のもとで、これだけのバリエーションが出来上がっているとのこと。

ほかには「三角形を基本構成要素とした箱の設計」と題した研究のプロトタイプ展示も。

そんなさまざまな紙箱のプロトタイプの一部は、こんなふうに実際に触れるようにもなっています。

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「おさわりOK」なのは、中央のテーブルに並んだ紙箱たち。

来場者の皆さんも、これはどうなっているんだろう? と気になる箱を手にとっては、へー! と驚いたり、ふむふむとうなずいたりしていました。

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また、会場内には試行錯誤の過程がかいま見られるコーナーもありました。

出来上がったプロトタイプの面白さもさることながら、これを生み出した研究員の皆さんの探究心と、この研究を可能にした福永紙工代表の山田明良さん(紙器研究所の代表でもあります)のふところの大きさに頭が下がります。

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会場を出ようとしたところ、代表の山田さんがいらしたので、少しだけお話をすることができました。

山田さん「かみの工作所やテラダモケイなどの活動が目立っていますが、工場では普通の紙の箱をつくったりしているんです。今回はその中間くらいをやりたくて、こういう活動を始めました。」

先細りと言われる紙業界にあって、自分たちの足元をしっかりと見つめながら、新しい可能性に挑戦していく経営者としての言葉が印象的でした。

ちなみに、本日も17時から研究員のお一人・三星安澄さん(グラフィックデザイナー)による無料レクチャーがおこなわれるそう。

お時間ある方はぜひお出かけください。

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◎文責:沼上純也(4F編集室)

静寂すぎる静物画家、ジョルジョ•モランディ

今年の1月、東京ステーションギャラリーにある展示を見に行った様子をブログに上げました。そして次回の展示はイタリアの画家 ジョルジョ•モランディであることを告知してからすっかり時が過ぎてしまいました。この展示の宣伝美術はALL RIGHTの髙田唯さん、そして封筒の制作を弊社でも携わらせていただきました。

 ●前回のブログ 職人とアーティストの共同作業 - 4F Blog

 ジョルジョ•モランディがイタリアの有名な画家であることは全く知らなかったのですがフライヤーの様子から色合いや柔らかい線に心魅かれていました。そして髙田唯さんがある時SNSでモランディに対する思いを綴っていて、何故だかその投稿がずーっと心に残っていました。モランディと髙田さんのデザインとがわたしの中で何か繋がったのでしょうか。展示終了間近なので先日、急いで見に行ってきました。

 

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 *髙田唯さんディレクションの招待状、活版も使われています。質感が優しい紙が使われていました

 

ジョルジョ•モランディはイタリア出身。私のイタリアのイメージは北と南では土地はもちろん人柄もかなり違う印象です。南はよく言われるように陽気で大らか、北はどちらかというと落ち着きのある雰囲気、モランディは案の定、ボローニャ出身ということもあって北の方ですね。作風から想像できます。

 

展示会場に入ると彼のポートレイト写真がありました。想像していたより細めで素敵な紳士に見えましたが、神経質そう.....にも見えました。その直感はまんざら外れてはなさそうです。

 

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至る所にどれも似たような静物画がずらり。まるで間違い探しをさせられているようです。花瓶、壷、水差し、ボウル、箱、等の日用品がモチーフ、位置を変えたり、ちょっと色が違う、だけのように見える。この人は一体どうしたのだ?

会場の壁には彼のコンセプトに繋がる言葉が綴られていました。私にとってその言葉が作品を読み解く手助けとなりました。その言葉と静物画から私は徐々に彼の表現することに近づけた気がしました。

とてもシンプルで短くまとめられた言葉ですが考えれば考えるほど思索にふけるものばかりです。

「目に見えるものは、描けるのです」

「重要なのは、ものの深奥に、本質にふれることです」

「実際に見ているもの以上に、抽象的で非現実的なものはない」

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この世の本質を見抜いているかのような言葉です。私たちの目の前に起こる現象というのはあくまでも現象であってその一歩奥の見えないところに本当の答えやヒントが隠されているというのは私自身が年齢を重ねる程に感じることです。モランディはそのこの世の本質とは何か?ということを探るために静物画をストイックに描き続けていたのかもしれません。

 

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 *上の絵と同じではないですよ

 

展示の解説にモランディの絵画は「時がとまった静寂さ、見る人を瞑想的な世界へ連れていく」とありました。確かに彼の絵は見れば見るほど自分と対話をさせられているような気持ちになり、埃がつもる音すら聞こえてきそうな静寂さがあります。モランディ自身も日々の自分の微妙な精神的変化をこの静物画で表現していたのでは、と私は感じます。

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 *ただそこに存在している

展示場には彼のアトリエの様子が見れる写真や映像がありました。数多くのモチーフがアトリエに陳列されていて埃だらけのものもありました。しかしその様子から単なる所有欲で物を持っているのではなくモランディと物とが一体化しているような佇まいでした。映像の中で印象に残った彼の言葉は、「私は一度使った物は大切にするけど、思い切って捨てないと物の隷縦になってしまうからね、日本では使い終わった物は埋葬するんだってね、」と。

 

私は学生時代に茶道をかじったのですが、ある生徒が不注意からお茶碗を割ってしまいした。やってはいけないことをしてしまったという思いで泣きじゃくる彼女に茶道の先生はまず割ってしまった事実を受け入れさせ、不注意に至ってしまった自分と対話し、感謝しながらお茶碗を土にかえすよう私たちを導いてくれました。この経験は私の中に今でも強く残っています。モランディだったらこの話をどう思うでしょうか?

 

いまでこそ、本当に大事な物だけで、ムダな物を持たない事や手放すことが流行っていますが物事の本質的なことを見抜く人達というのは時代に関係なくいたのです。彼らからいわせれば「流行」ということが分からないかもしれませんね。

 

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この展示に行った他の社員は一言「変態ですよね。」確かに100点近くある絵画、どれもこれも似たような物ばかり、奇妙な空間、一言「変態」でいいのかも。でもみんな、何かの変態だと私は思います。

 

終了間近のお知らせで申し訳ないのですが、今週末にでもぜひ。

www.ejrcf.or.jp

 

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