紙加工のお祭り4Fes! 2017、今年で3回目...

2017年の4月がやってきました。

毎日桜の変化を見ながら自転車通勤をしています。

 

桜の木を見ると時期がくれば勝手に咲き、勝手に散る、時間は止まってくれないという事を感じます。なんだか時間を見せられてる気がして、私にとっては正直ソワソワしてしまう時期なのです。

 

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*写真は桜の木ではありませんがある日、倒れていた光景です。大きな木の根っこ....この根っこが何でも肝心だなぁ...と思ったことを覚えています。

 

篠原紙工と出会ったのは3年前の2014年、Factory 4Fというプロジェクトを立ち上げた際に入社し、2015年の春には4Fes!という製本工場を一般公開する『お祭り』をはじめ、今年で3回目。

 私と篠原紙工/Factory 4Fとの付き合いも3年目、なにか区切りの年になりそうだなと予期しています。

 

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Factory 4Fというプロジェクトは製本工場という空間、製本工場の仕事、をもっと多くの人に知ってもらう、製本の世界を楽しんでもらうきっかけを作る、というのを目的として始めた事ですが、

 

 結果一番大きいのは自分たちの事を知る。篠原紙工の変化の渦を作り出す部署、となってしまった気がします。

 

みんな普段の仕事に追われながらでも知恵を絞りワークショップや、工場見学したり、セミナーやってみたり、続いたり、続かなかったり、ものすごい中途半端でイケてないところもたくさんあります。

 

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*4Fes! 2015 トークショー

 

それでもFactory 4Fの発信に引っかかって新しい人が入社してきてくれたり、なかには去ってゆく人もいて、でもその人間の出入りこそが結果一番分かりやすい変化に繋がっている気がします。

 

大きなコンセプトとか綿密にねられたプロジェクトではないけど、とにかく工場の暗い、閉鎖されたイメージをぶち破りたい、そういう『想い』みたいなものを出したからこそ変化の渦ができたのか、と感じています。

 

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 *4Fes! 2016 前夜祭トーク、(ミラーボール有)

 

 4Fes! とは来てくれるお客さんに楽しんでもらうだけでなく、自分たちへの刺激、非日常な時間で日頃の発散、結束力、いろんな目に見えない効果はたぶん...あって

 そして2017年は3回目だけど、今後も続ける?続けたい?

 ここで働く社員達が今後どういう答えを出していくか、今年の4Fes!がどうなるかによっても答えは変わるだろうし、今後の日頃の仕事への取り組みや社内環境によっても変わるだろうし、

 

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*何となくぼんやりヒラヒラと飛んでいるるくらいの方が物事って見えるのでは、と空の生き物みて思います

 どちらにせよ、会社の変化の渦が私の担当しているFactory 4Fならば、私自身が常に変化に敏感でいられる状態でいたいなと思います。

 桜を見てソワソワするのも、時間の大切さを腹の底から感じている私だからかもしれません。

 樹木の「桜サン」はただ自然に咲いて自分の生をまっとうしているだけなのに色々と人々に与えてくれるものです。私がそういう目で見てるだけ、ってことも言えますが。

 

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紙の質感、私たちの五感を使う手製本ワークショップ

先週の日曜日、手製本の基本のきほんワークショップを行いました。

こちらのワークショップ、仕上がりが華やかなものができるというわけではないのですが今後製本を『自分で』やってみよう、と思う方の入門としてはピッタリではないかと思っています。

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 豆本といってもFactory 4Fで作るのは小さな紙を折ってのり付けするだけ。

しかしその内容は冊子本タイプ、のり綴じタイプ、ジャバラ、と同じ種類の紙、同じサイズからでも多様な本ができるということの意味が含まれています。よく考えれば当たり前かもしれませんが、今一度立ち止まって本の作り方について考えられる内容です。

 そして豆本以外にも厚みが違う紙で本を2冊ほど作ります。こちらの内容の目的は厚みが違うことによってページのめくり感だったり、触ったときの手の感触だったり、はたまた本の全体像への影響だったり、という違いを知ることです。(良い写真が無くてゴメンナサイ)

 

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私たちが書店で手にする普通の本はあくまでも作る側、売る側のチョイスで全て出来ており、読み手である消費者はそれを受け取る(買う)だけですが、気に入ってる書籍をOO紙(紙の銘柄/OOkg)で印刷されているのが欲しいなぁ~、なんてことを考えるようになったら本物の紙好き。将来、紙の本の良さが感覚、感触、嗜好品的に重点を置かれた場合、そういうオーダーメイドが主流になるのでしょうか。

 

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*左が冊子本、右はのり綴じ (雑でゴメンナサイ) 

 

同じ内容の本でも印刷されている紙によって本という『物体』の印象は変わるでしょう。

しかし、ふと考えました。紙の種類が違うと書いてある内容が同じであっても読み手の受け取り方に影響があったりするのでしょうか?内容と本の物体とそれを五感で感じる私たちに何かしらの関係はあるのか?別の話になってしまいそうですが、そんなことも想像します。

ワークショップでは紙を切る工程は含まれていないので講師担当の新島さんが前もって断裁機で紙を用意してくれていたのですが、紙にズレは無く….キレイに二つ折りができました。このちょっとしたズレが仕上がりの本に影響が出るのでやはり製本作業にも向き不向きはあるかもしれない…。

 私は学生時代に製本に出会い、自分のできる範囲で作っていましたが私の場合は綿密に美しく仕上げる、というより表現とコンセプトが重要だったのでそこまで神経質に製本をしていませんでしたが、どうせ作るのなら美しく、効率よく仕上がる方がいい。あの当時このワークショップに参加していたらもっと気軽にもっと製本を身近に感じながら作ることができただろうなぁ、なんて思いました。

 

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この日のお客様はFactory 4Fに初めての方と何度か来たことがある方合わせて7名、とても穏やかな時間でした。失敗する人がいるわけでもなく、黙々と手作業が進められました。

手作業だけでなく、紙には目があることの説明や手製本が体験できる他の場所、書籍のおススメなども内容に含まれていて最後はお茶を飲みながらの時間。皆さんも打ち解けてきて色々な声が上がりました。私たちはお茶の時間を結構大事にしているのですが、今後、お茶の時間にもっと工夫できることはなんだろう?

限られた条件で見た目にも味にも全てをパーフェクトにできているわけではないのですがその分、相手を喜ばす時間をもっと充実させたいなと思っています。

 

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4F製本教室の紹介

地味にゆっくりと製本の魅力や面白さ、知るきっかけを発信しているFactory 4Fですが今回は3回シリーズでの製本ワークショップ開催。

 講師は今までも4Fでワークショップを行ってくださった、田茂山 仁 先生(柿澤憲専堂製本株式会社・東京都製本工業組合 - 東京製本高等技術専門校

漢字ばかりで長いご紹介?

 私たち製本会社は製本組合というのに入っていてそこには製本学校というのがあります。(主に手製本や機械の使い方等を学びます)

そこで講師をしている方が田茂山 仁 先生です。

 

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*過去のワークショップ『 継ぎ表紙の上製本づくり 』

 

篠原紙工からも毎年1名、終業後に学校へ通っています。卒業したある社員の案で『製本学校の先生を招いて4Fで出来たらいいね、』ということから始まった企画なのですが、今までのワークショップで田茂山先生ご自身も楽しんでくださったようで!今回3回はシリーズの教室になりました。

 さて、3回シリーズワークショップ、最終的にできるモノは『箱入りの文庫本』と考えていただければ良いかと思います。2月11日の第1回目は、『紙の束(つか・たば)が本になるまでの工程を知る、学ぶ』です。

 まず、先生が持ってきてくださる文庫本の背をザックリ切ってしまいます。(本を切るって何だかバチが当たりそうな気がするのは私だけですかね。)

 

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想像すると1枚1枚ペラの紙になりますね。(バラバラに落としたらページが大変になる状態!)その紙(本)を揃えて背を糊で軽く固めます。この状態だと、いわゆるペリペリはがせるメモ帳の状態。(分厚い状態です)そこからさらに薄く束の状態でナイフで裂きます。

 

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*指で上げた部分の束は糊で固められてます。分かるかな....

 

分解された文庫本がいくつかの糊で固められた束の状態になりました。今度は糸かがりの作業、糸でつないで束を合体させます。

 

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*糸でかがられた全体

 そして小口(本の辺)にマーブリングという技法を用います。チョコレートとかの模様でもあるやつです。

 

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*過去のマーブリングのワークショップ 

 

1日目はそこで終了……

何となくでも分かりますかね?

 

このワークショップに参加すると手製本のわりと上級に触れることができます。上級と言えども少人数で行いますのでどなたでもご参加ください。残りお席2名です!

 

◎お申し込み↓

factory4ftour.connpass.com

 

Factory4F タブチ http://factory4f.com/

 

 

2017 初のファクトリーツアーで今年のFactory 4Fを考える

1月も後半ですが皆さんお元気ですか?

Factory 4Fでは今年初めてのファクトリーツアーが開催されました。ある企業の方々計5名の参加。皆さん仲が良さそうで賑やかな時間を過ごされていました。

企業の団体さまの中には社外に皆で出る事があまり無いのか皆さん緊張されていたり、ぎこちない雰囲気の方々もたまーにいますが、今回の方々は思った事を冗談まじりで言ったりと楽しい雰囲気でした。

 

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*付揃えに挑戦

 ここ最近、ファクトリーツアーの案内は PUR機 担当の社員(新井翔子さん)と進行管理の(青柳健一さん)が担当しており私は工場に出るというより裏のもてなし側に回っているのですがファクトリーツアーが終わってお客さんの興奮度?のようなもので楽しかったのかイマイチだったのかを読むようにしております。

 

本当にありがたいことに、帰り際に『本当に楽しかった!!』と感動した様子でおっしゃってくださる方々がほとんどで、何か希望のような感覚、アイデアだったり、明日からの仕事へのやる気だったりが各方々に芽生えてるからじゃないか?と思うのですが、この Factory 4Fで受けた刺激はその後どんなエネルギーに変わっているのでしょうか。

 

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 *後日、お客様からご丁寧にお礼のメールまでいただきました。ありがとうございました。

 

このファクトリーツアーは毎週水曜の週1回のペースで開催しており、参加者がいない時もありますが月にゼロ...という月はなく、ちょうど良いペースでお客さまにお越しいただいております。

 Factory 4Fをオープンした時は製本工場のもの珍しさに来てるだけで数年後はすっかりお客さん来なくなったり?なんて事も想像したのですが、ありがたい事にその逆でお客さんは少しずつ増えております。この先、お客さんにもFactory 4Fにもどんな変化があるか。また私たちがどう変化できるか楽しみでもあります。

 

お客さんに良い刺激を与えるということは自分たちが良いエネルギーを持つべきでは...ということを考えると日々の業務の取り組み方、ストレスとの付き合い方、社内の人間関係、そういう細かいところに埃をためないことが大切、とますます実感するようになりました。

そして凝り固まった考え方をしないことでしょうか。そのためには想像力も大事...と考えると私たちがより良い変化のためにチャレンジすることはたくさんあります。

2017年はそういうより本質に近い部分の変化にチャレンジの年にしたいなと思います。

 

皆様、マイペースなFactory 4Fではありますが今年もよろしくお願い致します。4Fes!計画も着々と進んでおります。工場でお会いできるのを楽しみにしております。

 

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理想の紙活字インキを求めて、特練インキ工場へ!

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お久しぶりです。4F編集室の沼上です。

12月も目前にせまり、街はクリスマスムードが漂い始めたこの頃。Factory 4Fでは、次のイベントの準備が進んでいます。

その名もいいかげんなCOFFEEファクトリー。4Fでもおなじみの「紙活字」と「オリジナルコーヒーのブレンド」を同時に、そして“いい加減”に楽しむことができるワークショップです。

この良い加減のワークショップを前に、講師のお二人(和田由里子さん・守田篤史さん)と一緒に紙活字にぴったりな印刷インキを求めて、特練インキ工場へお邪魔してきました。

今回はその工場見学の様子をお届けします!

 

 

印刷文化を支える「特練インキ=特色インキ」

 

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今回お邪魔したのは、特練インキ=特色インキの専門メーカー・印材舎の川越工場。

このブログをご覧になる方には説明不要かもしれませんが、特色インキとは、CMYKのプロセスカラーでは再現できない色を再現するために、特別に調色されたインキのこと。

DICPANTONEなどのカラーチャートにある色はもちろん、常に安定していなければならないブランドを象徴する色(タバコのPeaceのパッケージに由来する「ピース紺」は有名ですね)から、微妙な自然素材の色まで、デザイナーが指定するさまざまな色を印刷物で再現するための特色インキが生み出されるのが、こうした特色インキの工場なのです。

ちなみに、印材舎は世界でも数すくない特色インキに特化したインキメーカー。大正12(西暦1923)年創業の老舗です。
社史をみると、創業当時は輸入に頼っていたグリース真鍮磨きやグラビアインキの国産化に成功し、日米英仏の特許を取得して鉄道省陸軍省海軍省に製品を納入するなど、しれっとすごい実績が書かれていたりします。

あの有名企業や人気商品のブランドイメージだったり、うっとりするような印刷物だったり。そんなこんなを縁の下から支える特色インキの製造現場へ。代表取締役社長の朝生公章さんにご案内いただき、いよいよ潜入です!

 

 

インキは寝かせて「色」を出す

 

最初に案内していただいたのは、インキの原材料を混ぜ合わせる工程。粘り方や乾燥方法まで考えたうえで、グラム単位で原材料を配合します。

 

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大きなタンクのなかで、色の素である「色料(顔料・染料)」、ワニス(樹脂・溶剤)、添加剤を正確に計量しながら配合していきます。

 

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こちらがインキに配合する樹脂。ちょっと見た感じは生キャラメルみたいで美味しそう(?)

 

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インキの原材料が混ぜ合わされたところ。

インキは60°Cほどの温度で常に温められているので、この区画はもわっとしています。その理由を朝生さんにお尋ねすると、「顔料とワニスが混ざりやすくするため」とのこと。特にスミは、暖かいところで寝かせると色が良くなるのだとか。インキも生き物だということを思わずにはいられないエピソード!

印材舎では、最低でも一晩、長いと一週間ほど寝かせることもあるそう。この寝かせる工程とそのあとの練肉(れんにく=インキを練ること)の工程によって美しい「色」を引き出すのです。

 

 

正確さへの飽くなき挑戦

 

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続いて見せていただいたのは、原材料を攪拌(かくはん)しながら混ぜていき(=混合攪拌)、「色」を作り上げていく工程。

 

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機械と職人さんの手の両方で混ぜ合わせます。この段階ではインキもかなり硬いので、そうとうな重労働。

 

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練ったインキが色見本と合っているかをチェックします。短冊にカットした紙にヘラでインキを伸ばし、サンプルと色比べをしていきます。

 

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光にかざして色味をチェック。チェックしては原材料を微調整して練り直し、練り直してはまたチェックして、を繰り返す集中力と色への知識が要求される作業です。納得する色になるまで数時間かけて調整をすることも。

 

 

「練り」がインキの品質を決める

 

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色の調整を経て、ようやくたどり着いたのが、こちらの大型の機械。「平型3本ロールミル」という機械で、インキの練り具合を調整してパッケージされた製品へと仕上げていきます。

 

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品質基準に合格した製品をローラーの奥側に乗せると、インキがローラーの間を通って手前に押し出されてきます。これによって顔料の粒子がつぶされ、インキにツヤが生まれます。

 

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ローラーの間で練られながら手前へと押し出されてきたインキは、ヘラを使ってふたたびローラーの上に乗せられ、さらに練られます。

練りが甘いと印刷の際に色がきれいに出ません。指定の硬さになるよう調整しながら、しっかりとインキを練り上げます。インキの最終的な品質を左右する重要な工程です。

 

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色の種類や用途によってローラーの圧かけ方や平型3本ロールミルに通す回数も変わります。普通の色は2回通しが基本のところ、スミは粘りにくいので3回通しが基本になっているとか。

ローラーからもったりと押し出されるインキと、それをリズミカルにすくってはふたたびローラーの上に乗せていく職人さんの手の動きはしばらく見ていてもまったく飽きません。

 

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指定の硬さに練り上がったインキは、缶に充填され、ラベル貼り、梱包を経て出荷されていきます。

 

 

 「色」をつくる頭脳

 

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インキの製造工程を見学した後にご案内いただいたのは、「色」を生み出す頭脳とも言える部屋でした。

ここでおこなわれているのは、オーダーされた色を印刷用インキとして再現するための製品設計=レシピ作り。コンピュータで分析した数値をもとに、熟練の職人さんが知識と経験をもとにインキを調色していきます。

 

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短冊にカットした紙にヘラでインキを伸ばして確認するのはもちろん、見え方が変わる場合があるということで展色機でも印刷して確認。

こうしてできたレシピにもとづいて、先ほど見てきたような工場での量産がおこなわれます。

 

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こちらが製品設計のマイスター・千田宗雄さん。「デザインのひきだし」にも登場したベテランです。「どんなに機械が進歩しても、結局最後は人の目なんです」とは社長の朝生さんの言。

 

 

ストックされた「色」たち

 

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最後にご案内いただいたのは、たくさんの棚がずらりと並んだ部屋。朝生さんがおもむろに引き出しを開けると、そこには小さな缶に入ったこれまでに作った特色インキがずらり。

 

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「繰り返し注文が入る色は、最初(の注文を受けた際)に作った色と最後(の注文を受けた際)に作った色の間に収まるようにします。そうすると誤差がどんどん狭まるので、色がブレずに済むんです」と朝生さん。

 

日頃、何気なく接しているさまざまな印刷物に使われている特色インキ。それができるまでには、こんなにもたくさんの工程があり、その一つ一つに職人さんたちの目と手が関わっていたとは!

 

そんな驚きと感動に浸っていると、和田さん・守田さんの冷静な声が。

 

 

理想の紙活字インキを求めて

 

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「例のインキのほうはいかがですか?」

 

そうでした。紙活字にぴったりなインキを求めて我々はここを訪れたのでした。

 

すると「こちらに用意できています」と朝生さん。

 

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実は、お二人は紙活字にも適した活版印刷用のオリジナルインキの開発を依頼しており、この日は製造現場の見学を兼ねてサンプルを受け取りにきたのでした。

 

乾燥の度合いが変わるように配合を違えた二種類のサンプル用インキを受け取り、印材舎の皆さんと意見交換をしてこの日のミッションは無事終了。

 

後日、テストを終えた和田さん・守田さんのお二人からはこんな声が寄せられました。

 

「黒がきれいだなぁと言う印象です。オフセットでも版画インキでも見たことのない黒。深くてピリッとしてきれい。金属活字の細いヘアラインもきれいに出ますし、紙活字の広面積でも活きてきます」(和田さん)

 

「黒の深さはオフには出せない深さでサイコーです!」(守田さん)

 

お二人が印材舎の皆さんと一緒に開発したこのインキ(※アップデート中)は、12月3日のFactory 4Fでのワークショップにも登場する予定。

 

このインキの何がスペシャルなのか、お二人から直接、じっくりお聞きいただくのも一興ですよ。

 

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アートホステルで本の展示会

先日、本の展示会に行ってきました。何度かこのブログでも出ていますが、篠原紙工の社員でもある新島龍彦(にいじまたつひこ)と彼の学生時代の同級生、梶原恵(かじわらめぐみ)の2人のから成るSHILHOUETTE BOOKS の展示です。

梶原恵+新島龍彦 「本の横顔展」

 

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タイトルは『本の横顔展』

学生時代からの彼らが手がけた作品、各個人の作品。2人が今までどんな作品を作ってきたかが見れる展示となっていました。

 

梶原さんはご本人の姿からはちょっと想像つきにくいのですが、強い意志と本を作るコンセプトがしっかりあって物語や彼女の世界観を本に落とし込むことが表現手段としてピタリとあっています。ブックデザインの会社に勤める彼女ですが学生時代の作品をみても内容も形も完成度が高い。梶原さんは本を作るための人、という感じがする素敵な女性です。

 

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*初日の夜に行きました。この展示は夜遅くまでやっています 

 

内容がしっかりとあってその仕掛けもすごく計算されている、これだけ聞くとなんだか近寄りがたい近代的なアート本を手がけているかのように聞こえるかもしれません。しかし、彼らの本はひとことで言うと、とても優しく近寄りやすい。それは私たちの身近な素材『紙』を使っているのも一つの要因かもしれません。

 

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*梶原さんの漢字を題材とした作品

 

コンセプトをうまく形にしているのが新島さんの本設計の表現です。彼の作品を見ているとまず「紙」が主役でその触り心地だったり色風合いを大事にしていて形もできるだけシンプル。まるで通常の本を見ているかのようですが本の内容とリンクしていて開くとちょっとした工夫や細部の美しさに心動かされます。

 

目を引くデザインというより角がきちんとでているとか、本を納める箱のサイズがジャストサイズとか無意識のうちに人間が美しいと感じるような所の設計をきちんとしているように感じます。そういう基本的な所をこの2人は大事にしていてそこが鑑賞者としてはとても入りやすい。

 

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*新島さんの作品

『本の横顔』というタイトルからも角度を変えて本と言うものを捉えて鑑賞してみると良いと思う。読むという行為をする本ではなく、その本の仕掛けによってワクワクしたり頭を使ったり、なるほど!と思ったり。これはデジタルではできないなぁと思いつつも今回は新しくデジタルを取り入れた作品もありました。

 

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 2人の紙の本からはちょっと遠い気がしましたがこの2人がデジタルを取り入れたとしたらどんな内容を作るのだろう、きっとデジタルを入りやすく紙の本でも感動したような同じ気持ちにさせてくれるに違いないと思う。

 

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*量産でないアート本、ちょっと佇まいが違います

 

彼らの代表作『motion shilhouette』を購入する方々を Factory 4Fでも見ているのですが誰もが心を動かされているのがその場で分かります。この日の展示でもいくつか売れていたそうです。彼らの価値観、表現、能力が本というかたちになってそれが人様の心に届く。その結果、本が売れお金になる。美しい流れの仕事だな....といつも思います。

 

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*開くと....そこには文字がりません。本当に美しい...想像力が湧きます

 

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*クリスマスカード等でこういうのがあるといい!

 

 

展示は6日(日)まで、展示会場は品川にあるアートをテーマにしたホステルARTnSHELTERというところで開催中。明日3日はワークショップも行われるそうです。

日時:2016年10月30日(日)- 11月6日(日)
10:00 - 21:00(初日は14:30~)
場所:ARTnSHELTER(http://www.artnshelter.com/
〒140-0011 東京都, 品川区東大井1-19-10
京急本線鮫洲駅 徒歩2分/品川駅から電車と徒歩で8分
大井町駅 徒歩10分
入場無料

 

展示会場となったホステルの写真を少し。夜なのでちょっと全体が暗いのですが。

 

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*カーブのかかった吹抜けの窓ここではPCが使えるようになっています

 

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*なんと地下室。何やらアートの作品の痕跡?これから暗室等もやる予定だとか

 

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*これからどんなホステルになるのか楽しみです

 

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あなたにとって大切な本はありますか?

10月8日(土)11:00-17:00で『継ぎ表紙の上製本づくり』のワークショップを行います。4F製本教室『 継ぎ表紙の上製本づくり 』 - connpass

 

継ぎ表紙の製本….

聞いてもどんなのだか想像つかない ? かもしれませんね。

私も最初、言葉だけでは分かりませんでした。

簡単に説明すると、表紙と背の部分がひと続きになっていない本のことです。例えば、表紙は布貼りだけど、背の部分は革素材や厚い布であったりする本のことです。

先生からお借りしている本を手に取ってみると背の部分は革素材の物でとても重厚感があります。やはり開いたり閉じたりするので背を強化するためにこういう本ができたのかと思います。

 

f:id:Factory4F:20160930152612j:plain*こちらは背の部分が丸い丸背の上製本。中身は文庫本です 

 

ところで、自分の心のよりどころのような本はみなさんは持っていますか?

この継ぎ表紙本を見て、ある方の話を思い出しました。

 

その人は古くからのインドの智慧や人生哲学が心の支えで、内容が難しくても何度も何度も本がボロボロになるまで読み返し、しまいにはその本を製本し直して自分の1冊にしたそうです。その時の装丁が継ぎ表紙の本でした。

 

その方はそのインドの智慧を読むようになってからよけいなハウツー本を必要としなくなったと言っていました。読んでいくうちに、その人の人生経験も重ねて少しづずつその本が伝えたいことを理解していったそうです。

 自分の支えとなる1冊の本を自分で製本し直して大切に何度も読み返す、これこそこういう装丁がふさわしいなぁ、と思いました。

 

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あなたにとってそういう本があればきっと何度も開いて読むでしょうし、愛情、その本に対して敬意みたいな心もうまれてくるかもしれません。

私にとって本とは美しい装丁、面白いデザイン、造形物という視点より先ずは中身。何が書かれていてどんな智慧や知識や感動を与えてくれるかというのが先。

物質としてなくなったとしてもそこから学んだことが自分の中に残ればそれで役目は終了です。

しかし、もし手元においておくなら、機能的に強化されていて、美しい佇まいの本が部屋にひっそりあれば毎日がより楽しくなると思います。

 

 

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*先生の本にはマーブリングの施しもされています。今回マーブリングも行いますよ! 

 

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