「包む」の本質を考える。イベントのお知らせ。

こんにちは

本や紙加工にまつわる少しマニアックなトークサロン「本をめで隊」のお知らせ。

5月15日(火)19:00~21:00 Factory 4F (篠原紙工4階) 

本をめで隊vol.7『 つつむ 』〜 つつむの本質をさぐる 〜 - connpass

 

今回のテーマは「つつむ」

 

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*キャラメル包みの梱包物たち 

 

今までとはちょっと違って本から少し離れますが常に紙と仕事をしている製本会社やデザインに携わる方々の視線から「つつむ」ということを考えてみます。どなたでもご参加できますのでお気軽にお越し下さい。

 

 

さて、

製本会社で「つつむ」ということはとても身近です。

仕上がった冊子本を50部、100部、等々、その仕事の内容によって数も変わりますが、

工場を見渡すときれいに梱包されたものが積み重なっている光景がよく見られます。

キャラメル梱包されたものを見ると留めてあるテープの長さや位置まで、ほぼ一緒にできている...という社員もいます。

 

積み荷姿が美しい

 

どんな仕事でも丁寧さって地味なところににじみ出てきますね。

 

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 *これは私達が梱包に使うために購入するクラフト紙、これもどなたかが、機械が?梱包しているのですね

 

 梱包して重ねて、出荷、という最後の仕上げ作業。一見単純にも聞こえますが、紙で包む際の力加減でぴしっと包めるかどうかも違いますし、スピードも必要、でも荷崩れしないようにしっかり、と要求されることは多いのです。

 

しかも物によってはふんわり梱包の方が良い場合もあるし、それを見極めるのは人であって、その人の仕事ぶりが見えます。

 

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*積み重ねた後はラップで巻きます。これは微妙に角が丸い形で梱包されています

 

私も実際に現場の仕事をしていた時は自分のヘタクソな梱包に残念な思いをした記憶があります。これをできるようになるまでどれくらいかかるんだろう…

なんて思っているうちに工場の仕事からは抜けてしまったので、現場でサッサと梱包する人を見る度に尊敬の気持ちがわきます。

 

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包む作業って小さな世界を作る、秩序立つという感じで包んでいる本人の気持ちもすっきりするのではないでしょうか。最後のまとめ、これまでその仕事につぎ込んできたエネルギーをも無意識では入れ込んでいるのかもしれませんね。

 だから梱包されたものを開けるときってワクワクで嬉しいのかもしれない....!

 

このイベントでどんな会話がなされるのでしょうか?

 

「つつむの本質」哲学的なテーマにも聞こえますが、梱包物は私達の日常に溢れています。このトーク以降、皆さんのまわりの包まれているものへの見方が変わるかもしれません....!

そんなちょっとした日常の変化が楽しめるようなトークサロンになれば良いなと思います。T

 

☆ お申し込みはこちら

factory4ftour.connpass.com

 

会社内での価値観の共有

 

 

製本とは全く関係のないお話ですが

 

働くとは一体なんなのだろう?

一言で答えはでないので働きながら、考えているという感じですが。

 

働くこととは...

 

生活の糧を得ること、

自分の得意なことや才能、能力を発揮する

人のために働く(自分を他者のために役に立たせる)

 

では、仕事とは一体なんだろう?

働くことと似ていますが、仕事を通して人の役に立つこと、人を喜ばせること、

そして周りの人を巻き込んで自分も相手も豊かにすること、

 

こういうことなのではないだろうか?と考え続けています。

(今後変更するかも….だけど)

 

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 仕事は周囲の人を巻き込んで豊かにする、ということを前提として考えると

 誰と一緒に仕事をしたいか、ということを考えるのは非常に重要です。

 

では、どんな人と一緒に仕事をするのが良いかというと

 

やはり、価値観が共有できる人。と言えるのではないでしょうか。

 

 一緒に仕事をしているうちにお互いの違う価値観を交換してより良い関係

になればベストですが、根底の価値観の違う人と一緒に仕事をするのは

おそらく相当大変でしょう。

 

 

人は変わらないし、無理して変えなくちゃいけないような関係性は不自然です。

 

 

自分は、会社は、どんなことを基準に日々起こることを判断し、行動するのか。

それは自分が働く会社を選ぶ時にも重要になってくるのかもしれません。

自分は働く事において、仕事をすることにおいて、どんな価値観があるのか。

 

そして企業側はこの会社は「こんな考えを大事にしていますよ」ということをきちん日々の仕事の中で伝える努力が必要なのだと思います。

 

それがいわゆる、会社の考え方の基準(経営理念)となるわけですが、

この考え方の基準というのが無い...となると、いろんな価値観を持った人が混ざり、

噛み合ずにお互いに不幸な関係になってしまうのだと思います。

 

 

人それぞれの価値観に善悪は無いので企業としてその判断がむつかしい、、、

とは思いますが、

 

私はこれからの時代、「自分はどういうことを大切にしている」ということを個人も企業も持っていた方が生きやすい世界になるのでは?思っています。

 

 

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私なりに、会社内でどうやったら相手の価値観を知ることができ、自分の考えも知ってもらうことができるだろうか、と考えた時、

 

やはり日頃からよく話しをする。

この積み重ねが一番かと今のところ思っています。

(ディスカッションとかミーティングとかじゃないですよ)

人によって響くことやタイミングもあるので根気よく続けることが必要ですが。

 

お互いの日常のさりげない出来事をよく聞いて少し掘り下げて

相手に質問してみたり、逆に自分も話して相手から意見をもらったり。

 

ちょっとした新しい気づき、発見、良い変化があると人は嬉しいものだと思います。

そこからお互いに尊敬の念が生まれ、相手を受け入れる器も広がると結果、広い視野で物事を考えられる人の集まりになるのかな?と思います。

 

とはいえ、まずは自分。

心身を整え、学んだことや体験した本当の情報をこれからも社内、

ブログでも発信していこうと思います。

T

 

 

 

 

変化との付き合い方

今まで篠原紙工で頑張ってきた電子レンジがずっと不調で、ついに買い替えました。その電子レンジがきた日、社員の一人が嬉しそうに『おお、新生活っぽい…..』と一言。

 そうか、そんな時期なのか。

何だかその彼女の一言が心に残ります。

 

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*新しい電子レンジ、冷蔵庫は昭和な感じの緑...です 

 

新生活、春。

 

以前にも書いた記憶がありますが、私はちょっと春が苦手です。気温差も激しかったりするせいなのか、なんだかソワソワ、この気持ちが何なのか。もしかしたら子供の頃、学校のクラスが変わったりして馴染むのに時間がかかってたからなのか? それもちょっと違う気もして、

正直なところ自分は変化に対して恐れはあまり無い…と思っていたのですが、私の心奥底は変化を恐れていて、それが今までの人生の記憶と結びついてこの春先のソワソワ感に実は繋がっているのかもしれない。そんな事をぼんやり考えました。

 

自分の内心というのは案外に分からないものです。その自分の中の記憶や感情の慣れをどのように上書きしていくべきか?

  

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*本にまみれた旧電子レンジ。今までありがとう.....

 

私は篠原紙工の中でもFactory 4F という肩書き不明の社員でして、お茶を入れたり、掃除をしたり、話を聞いたり、と身の回りの雑用と言われそうな事をしているのですが、そのポジションから見えるこの会社の変化というのは結構大きく、それは日々の積み重ねの結果なのだろう、と思います。 

 

私は工場の機械の扱いや実務では直接変化を起こす事はできませんが、社内での会話の内容、時間の使い方、言葉遣い、挨拶、食のこと、健康、お金の使い方、いわゆる日常の行いを意識すれば結果仕事の意識変化にも繋がるものと信じてます。

 

今まで存在していた、当たり前を見直し、崩してまた新しい当たり前を作って毎日の中にちょっとづつ取り入れて行く。小さい変化ってそうやって起こっているのかもしれません。そして、そういう地味な事にこそ日々意識していかない限り、大きなステージというのは変わらないのでしょう。それは個人レベルでも会社レベルでも。

 

人は慣れている方が楽ですから変化を恐れ、嫌います。しかし、恐れよりもステージが上がることの何とも言えないあの全体的な幸福感を実感できることが積み重なればこの世を生き抜いて行くのはきっと楽しくなるはずです。

 

日々の小さな変化をどう作り上げて行くか、そのためにまずは自分はどのように在りたいか、在るべきか、そんなことを毎日考えています。T

 

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*私はつい下をむいて歩きがちです。お金もよく拾います。でも明日は歩き方や姿勢により意識してみます。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぼろノート」のストーリー

こんにちは。Factory 4F では今どんなモノが売られているか? (2018年、3月現在)

 •印刷加工連の文具すべて

•紙加工見本 4F BOX

•篠原紙工で制作したクラムボンさんの紙ジャケットCD

•影で遊ぶ仕掛け絵本、モーションシルエット

•ふわぼろノート

 今日は『ふわぼろノート』をご紹介したいと思います。

このノートのストーリは2017年の4月に印刷加工連で『紙博』というイベントの参加がきっかけでした。(この『紙博』手紙舎さん主催なのですが、もんのすごい!来場者数だったそうです。数千人…とか?すごい。手紙舎さんのパワー)

 

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*ただの白いノート、ですが、、、

 

 

「紙文具の駄菓子屋」をコンセプトにチープで手に取りやすい文具をたくさん作ろう!という事になりみんなでアイデア出しの時、篠原紙工の折り担当、岩谷くん(造形大出身)がふと、ある束見本を見つけました。

 

ファイバーラッファー(ミーリング)加工されている束見本。

………ファイバーラッファーって?

 

ここからちょっと製本の事を説明。

 ファイバーラッファーとは無線綴のPUR機械で施される加工の一つで、簡単に言うと、本の背をガリッガリと削り、糊が浸透しやすくする加工のことです。「ファイバー」というくらいなので削り具合がとても細かく、紙という素材の断面がきれいにみえる感じに仕上がります。

 

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そして無線綴じPUR機の「PUR」とは糊の種類の一つなのですがとても強度が高く、少しの量でもぴったりくっつき、糊を引く量が少なくていいので本の開きが良い!という特徴があります。そのため表面の削り具合があんまり粗いとがっつり糊が入ってしまうのでPURの糊を使用する際はファイバーラッファーで細かく繊細に削る必要があるのです。

 

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*このように無線綴じには背に糊が浸透しやすいようにミーリング(削る)という加工が基本、施されています。

 さて、ストーリーに戻ります。

 そのファイバーラッファーは通常は本の「背」だけに施しますが、その束見本は小口にも天地にも削られた加工が入ってて全体的にモサモサした紙の固まりのような感じでした。

 これを見た岩谷クン…本って通常はカクカクしてて滑らかでってイメージがあるけど、

「従来の本の質感から離れた物体」として出してみるのも面白いかも思い、表紙にはヴィベールというフワフワした特殊用紙を巻いてみました。

 

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すると、仕上がりは何とも質感が特殊で優しいノートになりました。ファイバーラッファーだけの本の状態だと削られ感が目立ちますが、表紙にヴィベールを巻くと一気にフワッと、まるで綿毛のようです。

 

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そして表紙のフワフワ感と表面のボロボロ感で『ふわぼろノート』と命名されました。

そのままかも。

 

紙博ではたくさんの方が手に取り、お買い求めくださいました。ありがとうございました!

 

「ふわぼろノート」のストーリーの紹介でした。

 

また!

T

 

自分にとっての基本とは?

先日、株式会社 東北紙業社の現社長である小野幸弘さんから今までの会社の歴史や先代のお話を伺う事ができました。

 

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東北紙業さんのHP

tohoku-shigyosya.co.jp

 

東北紙業社さんは複雑な案件でも相談にのってくれる頼もしい抜き屋さん。両国で家族経営、ベテラン社員さんがいて、という典型的な町工場という感じの会社。中に入ると古そうな機械とたくさんの部品や抜き型に囲まれて黙々と職人さんが機械を回していました。

 

社長さんはキリリとしていて、無口かと思いきや、これまでの歴史やどんな考えを持って仕事をしているかを積極的にお話ししてくださいました。

 

先代が開業し、戦争や高度経済成長も通り抜けて今に至っているのですが周囲の同業者は次々と廃業し、これからはもっと厳しい業界である。と現状をきちんと受け入れている姿が見えました。しかし聞きながらそれでもこの東北紙業社さんが生き残っているのは何故だろう?そんな事を考えながら聞いていたのですが恐らくその答えはシンプルに真面目であることか?と思いました。

 

頑固さはあるものの、新しい技術や方法を研究し仕事を楽しみ、他の事業に手を出したり脇道しないで抜きの世界をとことん追求し、一本筋の通ったご自身の判断力をきちんと持っていること。

 

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会社を経営している方なら組合などでお金を動かす事もあり、そこにも品位というものが表れると思います。しかしつい心が動いてちょっと横取りしたり、という事だってこの世にはたくさんあると思います。

そんな過去の出来事も話してくれましたが小野社長はそれに対して『どんなことでも簡単に横取りしちゃいけない。それは技術も。先代もそういう考えの人だった。』とシンプルに一言。組合の仕事なら全体がどうよくなるかを考え、自分の抜きの仕事ならお客さんの要望にどう技術を提供できるかを考えるのが第一。

 

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*紙1枚分の誤差も手で触ったら分かるそう..... 

 

聞く分には当たり前のように聞こえますが、つい自分の都合の良さだったり、目の前に起こっていることに捕われてで大事にしている事がみえなくなってしまう方が多いのではないでしょうか。自分の中できちんとルールを持つという事の大切さを改めて気づかされました。

 

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真面目であることは自分の中の基本がしっかりしていることかもしれません。それではその基本とは一体なんでしょう?

 

恐らくこれは人によって違うと思いますがその基本を自分で作り上げてそれに合う行動もしていればそれがその人らしい魅力的な真面目さになり、結果、自分と違う考えの人でもそれが信頼というもので繋がれるのかもしれません。

 

小野社長とお話をした後、今一度、自分の基本を少しづつ作り直していきたいと思いました。

 

タブチ

 

 

 

 

 

 

 

 

4F BOXの中に詰まっているストーリー

製本の面白さや製本工場を多くの人に知ってもらおうと始まったFactory 4F。2014年から始まり今年で4年目。私はこのFactory 4Fのプロジェクトをきっかけに入社したので私も4年目に突入。

 

ここ最近、私の中で今までを振り返る機会が多々あります。

そこで突然ですが、4F BOXの生い立ちのお話をしたいと思います。

 

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4F BOXはもともとファクトリーツアー(工場見学)に来てくださったお客さんへのお土産案として考え出されました。

 

前から篠原紙工では印刷会社の営業さんや案件を相談しに来たデザイナーさんを工場へ案内する事があり、中には見学だけを希望して、わざわざ足を運んでくださる方もいました。その度に弊社の営業さんが過去の制作事例をサンプルとして用意したりしてそこそこ時間をかけて会社を案内していたのです。

 

そこでFactory 4Fを立ち上げる際、これを機にファクトリーツアーとして毎週水曜日開催で有料にしても良いくらいにしてはどうだろう?と案が出ました。有料にするからには篠原紙工で量産できるユニークなものをサンプル集にしてお土産を充実させよう。という事に。

◎ファクトリーツアーはこちら→Factory 4F - Event

 

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*12種類のサンプル集。全て量産可。どんな機械を使っているか、など解説集付です 

 

Factory 4Fの立ち上げの際にも協力してくれた 株式会社オールライト Allright がサンプル集の制作にも協力。着々と出来上がったのですが、完成品は想像以上に立派なサンプルBOXに...なってしまいました。

お土産として差し上げるにはちょっと大袈裟かも....?となり、ならば販売してみたらどうだろうか?となったのです。

 

その後、4F BOXは篠原紙工でできる制作物を紹介する際に使用。そしてファクトリーツアーのお土産は別のモノを用意。(見学に来てくださった方はご存知かと、ひと工夫されたメモ&鉛筆です)

 

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私たちとしては4F BOXは印刷会社の営業さんやデザイナーさん、紙にまつわるお仕事をされている方に仕事のツールとして役に立つ事が願いでした。その結果、少しでも製本の面白さが色んな人に伝われば、という思いも込めて。

 

今から思うとあの時の篠原紙工は紙の需要が無くなりつつある今、製本会社自らが自分たちの価値を発信しなければ、という思いで必死だったようにも感じます。

 

それは今も変わらず試行錯誤だけれど、当時はたくさんの外部スタッフも協力してくれて、みんなで知恵を出し合って篠原紙工という会社を4F BOXの中に表現していました。

 

 

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そして、この4F BOXやFactory 4Fのプロジェクトを機に篠原紙工では様々なドラマが繰り広げられ、今日に至っております。立ち上げ当初の目的とだいぶズレが生じていたりしますが、目の前にある課題や変化を恐れない行動の結果が良くも悪くも今の篠原紙工(=Factory 4F)なのかと思います。

 

….と思うとかなりストーリーの入ったBOX。なんだか持っただけで重そう.....

 

しかし、

 

何かを作り上げる際というのはそういう強い良いエネルギーが込められている事が大事だと思います。

 

工場直販はもちろんですがネットで販売も始め、細く長くですが皆さんの手元に届いていると思います。皆さん、どのように使っていただいているのでしょうか...?何かのお役に立てているならば本当に幸いです。

 まだお手元に無い方はぜひSTORESを覗いてみてくださいね。

 タブチ

 ◎4F BOX STORES 

factory4f.stores.jp

 

 



ご存知ですか?パッド印刷機 「なんでもくん」

先日、足立区の江北(こうほく)にある印刷会社 安心堂さんへ行ってきました。おそらく?初めて乗った日暮里舎人ライナー。車内はこじんまりとしたいい雰囲気でこれから伺う印刷会社の地域がどんな様子かを想像しました。

住宅街の中を歩いて行くと入り口がちょっとオシャレな建物を発見、そちらが安心堂さんです。ここでは試作工場という名前でフリーランスや個人の方が気軽に印刷機を使えるように会員制で工場を公開し、シルクスクリーン印刷とパッド印刷が使えるようになっています。はて....パッド印刷という印刷機、私は聞いたことも見たことも、まったく存じませんでした。

 

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*こちら、なんでもくん

 パッド印刷とはシリコンでできているパッドを使用し、凹版からインキを拾い、転写する印刷方法。

シリコンゴムで柔らかいから曲面にも印刷できるというのが特徴。例えばコーヒー屋さんのプラスチックカップとかボールに印刷できたり(すごく柔らかい、版は付いていないゴムハンコ、と考えると分かりやすいですかね?)

 

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*↑版にインキを引きます

 

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*小さくてみえないかな?パンダの絵柄。水色のがシリコンパッド

 

一緒に見学に行った方々は皆さん印刷に詳しい方ばかり。パッド印刷はもちろん知っているよ、という感じで、私にこの印刷機が理解できるだろうか…とちょっと不安の中、会長さんのお話が始まりました。

 

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*ブニーっと押します (お箸に印刷させてもらいました)

 

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*お箸に無事に転写

 

実は暑さのせいか頭がもうろうとしていた私ですが、会長さんのエネルギッシュなある言葉で目が覚めました。

 

「色々厳しい世の中かもしれないけれど、アイデア次第でいくらでも仕事はできるしニッチなところにこそ面白い仕事は溢れているんですよ」とおっしゃっていました。勇気溢れる言葉だなぁ、と思いました。

 

「世の中には隙間がいっぱいあるんです」と。この言葉の裏にはお客さんがどんなことを必要としていてどういうサービスを提供したら喜ばれるか、ということを追求してきた方が言える言葉だと思いました。毎度のことですが私はその会社で仕事をする方々の心意気に注目してしまいます。私はこの会長さんの仕事に対する姿勢、考え方、そしてアナログさを上手く活用するユニークさに魅かれました。

 

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*安心堂の会長さんであり特殊印刷 技術部の丸山さん 

 

そして会長さんがエネルギーを注いだ結果の製品が手動式小型パッド印刷機『なんでもくん』(いいネームング)どんな物にでも印刷しちゃいます。印刷って紙だけではなく、私たちの身の回りには数えきれないほどあって、知らず知らずのうちにいろんな情報が印刷という手法で私たちの思考に入ってるのだな、と思いました。例えば、誰かが街でアイスコーヒーを飲んでたとしてふと、そのカップを見てドトールなのかスターバックスなのか、という一瞬の判断も一つの情報手段ですよね。あっ、今日はドトールに行こう、と無意識にお店に行ってるかもしれません!これだって印刷がなければこうならないかもしれない。

 

 

そして印刷することで付加価値が増すものはたくさんあります。あまり深く考えたことはなかったけれど、確かに製品を作って最後にラベルや印刷を施すだけでグンとその商品が魅力的になったり仕上げの意気が吹き込まれたようになります。「できた、完成、誕生!」という、あの感じ。安心堂さんの工房の雰囲気やお話を聞いていると子供の頃、ものを作った時の喜び、みたいなものが鮮明に蘇させられるような気持ちになりました。

 

 

子供の頃は言葉にはできなかったけれど制作した時の喜びって達成感だけでなくておそらくその先の誰かに喜んでもらいたい、という気持ちも無意識のうちにあったのかもしれません。作ったものを誰かに褒めてもらったり、プレゼントして相手に喜んでもらったり、誰かの役に立ったり。究極のところ大人になってもその喜びの本質は変わっていなくて大人になるとそれを仕事ということを通して喜びを循環させているのかもしれません。

 

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*なぜか窓枠のサッシに印刷、これはより小さい小型パッド印刷機「どこでもくん」だと可能 

 

デザイナーさん達から生まれたせっかくのアイデアを1枚からでも印刷して形にしてあげたい。安心堂さんは機械を開発してデザイナーさん達やそれを必要とされる人に喜ばれ、デザイナーさん達はまたその先のクライアントに喜ばれ、改めて私たちは誰かの役に立ったと感じられた時に何というか、幸福感みたいなものに包まれて、そしてまた頑張ろうと思えるのだと思います。

 

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*こんなモノ達に印刷できます

 

機械を開発しちゃうなんてすごいなぁ〜、どんな才能の持ち主がやるんだろう、と完全文系の私はよく憧れるのですが、何かの才能に優れている、というより誰かの役に立とう、と考えてれば結果、才能みたいなものは開花するのかもしれません。手の届かない憧れる才能よりも自分の持ってるものを最大限に目の前の人に使えば才能クンはやってくる。私もどこかの隙間で誰かのお役に立てていれば幸いです。

 

Factory4F タブチ http://factory4f.com/