新しい機械入りました!そしてその子との相性

篠原紙工ではミシン綴じという製本方法があります。Factory 4F、篠原紙工の4階にそのミシンはあり、綴じ作業が行われております。一応工業用ですが製本用というわけではなく洋服を縫う専用の機械です。

 

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*販売している紙加工見本セット 4F BOX  Factory 4F に入っているno.11の平ミシン綴じ ももちろん彼女が縫いました

 

担当しているのは佐藤さん。元アパレルにいた彼女なので紙より布に愛を感じるのは分かります。なのになぜ今は製本の業界へ....?お互いの人生経験の話をすると、『本当、なんでかねぇ~』と笑って話しているのですが、ある時こんなことを言っているのが印象的でした。『自分がパターンをひいた洋服を街の中で見るのが夢』だと。それは今のところまだ叶ってないけれど、それが『服』ではなくて『冊子』という点においては叶っている。これは彼女の話だけではない、夢の叶う形ってどう出るか分からないからおもしろい。

 

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*今私と2人で製作中のワンピースのパターン、もちろん佐藤さん作

 

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*パターンの製作中  

 

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*4階にある佐藤さんミシン 

 

 でもこのミシン綴じは佐藤さんとファッション業界の縁を繋げているのでしょうか?アパレル系の冊子でよく使われ、篠原紙工の中で人気なお仕事でもあります。数千部のミシン縫いをこの、東京の、大島の、篠原紙工の4階で彼女一人が縫っていて、それがこの日本の世に出回っていると思うとすごい。

 ミシンの仕事が入ってくると彼女はフル稼働、なのですがあんまり忙しそうにしている様子は見えない。むしろ彼女よりミシンの音の方が忙しさを表しています。物によっては縫われる音が微妙に違い、そして彼女が糸切りばさみを机に置く音がある程度一定なのが面白い。その音が一日中テンポ良く響くのです。ということは、やっぱり機械と機械を操る人というのはある程度一心同体になっているのでしょう。

  

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*糸切りハサミとちゃんと糸くずを入れるゴミ箱がある

 

 なんて私はのんきにパソコンを打ちながら思います。おそらく、ミシンだけでなく篠原紙工の工場で働く人全員が何かしらそういう感覚はあると思います。私が1階と2階でパソコン仕事をしたらそういう所ももっと見えるかもしれない。しかし、残念ながらあの大きな機械音の中で私の精神状態はもちそうにないけれど。

 

オシャレな冊子に人気なミシン綴じ、他にも案件が増えてきて佐藤さん一人でやるには限界もあり、篠原社長が動きました。いつもお世話になっている機械屋さんにミシンの機械をオーダーメイド。しかも中古のミシン?とか何やらいろんな物を合体させ作ったとか。かなり時間もかかって、社長も佐藤さんもあーだ、こーだ、と機械屋さんと相談していました。

 

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*この人(機械)です

まるで新型ロボットを作っている親のようにも見えました。そして最近やっと!我が子(機械)が篠原紙工へ。それも2階の工場に。あんまり興奮する様子もない佐藤さんに新しい子が入ってきた気持ちを聞くと、あんまりこのこの子(機械)の扱いがピンと来ないと。その時に彼女の口から出てきた言葉が

『この子と相性があうか、心配だわ~』

 

何を?言う?と思われる方もいるかな?

 

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*エスプレッソマシーン、全然コーヒーに詳しくないのにこれを使うのが楽しくて長年付き合ってます 

 

私も日々、些細な日用品を選ぶ時でもそういうことを頻繁に思うのでこの言葉がすごく心に響きます。どんな小さい物でも使い心地が良かったり、自分の感覚や手に合ったり、相性はあると思うのでそれが仕事の機械ともなれば仲良くならないと篠原紙工では仕事になりません。馴染みがないものを使う不安さからそういう言葉が出て来るのかもしれませんが佐藤さんには頑張って慣れて自分のものにしてもらうしかありません!

 

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何度も書きますが工場にいるととにかく物に囲まれています、しかも大型の物。そしてそこから流れてくる大量生産の出来上がる物達。エネルギー満載の空間なのです。なのでその物そのものが持つ力や価値を発揮させないと単なる大きな物質。悲しい存在にならないためにも操るオペレーターさんには機械と仲良くなって可愛がってほしいです。

 

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*NEWミシン、人が流すだけで自動的に縫ってくれるとか

 

自分が手がけたものを街の中で見るのが夢、この新しい機械を導入すれば大量生産を効率よくできて出会うチャンスも増えるかも?でも、ミシンは手先も足も使う機械だし、もしかしたら自分の技術力を使った感じはちょっと消えるかもしれませんね。

 

いつか紙じゃなくて彼女が手がけた洋服が街の中で見れる夢が叶うといいなぁ。篠原紙工で洋裁の相談受け付けましょうか、街でも着れるカッコいい工場作業着とか。

 

新しい機械が佐藤さんと仲良く稼働する日が来るのを楽しみにしております。

 

Factory4F タブチ http://factory4f.com/