殻も何もかもピストルで撃ってみよう!
このブログに目を通してくださっている方は工場だけでなく美術館へ行くのが好きな方もいらっしゃるでしょう。Factory 4Fの属する篠原紙工でも美術館関連のお仕事をさせていただいています。
正直なところ、わたしにとって美術館はものすごくエネルギーをとられる場所として思い込んでました。特に現代アートというのは複雑難解で分からない自分はその作家の聖域に立ち入ってはいけない気がしてなりませんでした。アートに対する劣等感みたいなものだったと思います。とはいえども美術の世界とは付かず離れずの関係で今に至ります。
数ヶ月前、篠原紙工が関わった関係である美術館の招待券をいただき、久しぶりに美術館へ行きました。相当久しぶりだったからでしょうか、驚いた事にとても楽しい時間が過ごせました。2枚あったので2日間連日で行ったくらいです。(そのお話も後日できたらと思います)なにも特別なきっかけがあったわけではありませんが、単純に今までが自分の思う以上に凝り固まった考えで物事を判断していたのでしょう。(今でもまだまだですが...)
少なからずとも人生経験を重ねてくると現代アートの中にも自分と重なる部分を見つける事ができて、今では自分なりの味い方、楽しみ方ができるようになったのではないか、と思います。その日をきっかけにもっと気軽に美術館へ行こうと思うようになりました。
今回お話しするのはその招待券を頂いた展示会ではないのですが、『行かねば』と直感的に思った展示会です。知ってる方もたくさんいると思いますが新国立美術館で行われていたフランス人美術家のニキ・ド・サンファルです。(昨日で展示は終了です...)
*ニキ・ド・サンファル(1930-2002)
太った女性の像『ナナ』で有名な彼女、おそらくどこかで見たことがある人も多いはず。私も彼女の代表作をちらりと知っている程度でしたが改めて彼女の作品を見て自由で気持ちよさを感じました。ボヨーンとしたナナの身体は女性性を丸出しです。愛らしくも、ものすごく主張が激しいところに魅かれます。
*ボヨ〜ン、と踊るナナ!
彼女の生い立ちや、時代背景、日本との繋がり、知らないことばかりで改めてニキ・ド・サンファルについて学び、魅了されてしまいした。そして、もしかしたら展示会の仕掛人の思うツボ?かもしれませんが、今の社会において女性の生き方について考えさせられるものがありました。
今、社会ではできれば女性にはバリバリと働いてもらいたく、子供も生んでもらいたくて、そして、美しくもあってほしい、よく言われる『母であり、妻であり、女であり』という言葉です。否定的にとらえるつもりはないですが限られた人生の中で全部やるのは簡単、ではない....と思います。そもそも、そういう役割や性別も抜かしてまずはその人間自身を見つめる方が第一優先では?とも思いますがニキもそういう事を深く考えた美術家だったようです。
*ニキの作品でよく使われたモチーフ、ピストル、ナイフ、など自分の殻を破る象徴です 。
最近よく思うのですが、例えば国営放送であるNHKの女性が主役のドラマなどを見ていても女の人が社会を変えていくというような内容のものが多く、男の人はその女の人の活躍を支える、もしくは共にたくましく行きていく姿を描いていたり、ちょっとしたドキュメントや歴史上の人物の紹介も『女性』がメインだったりと、もちろん内容は充実していて面白く、刺激は受けるのですが...その反面、番組の背景からこの国がどんな女性像を求めているのかがうかがえます。なるほど、こういう風になってほしいのね。と
*「射撃絵画」でアーティストになる決意表明をした時の彼女は強く美しい
このニキの展示会も女性が勇気づけられるようなメッセージやコンセプトが盛りだくさんです。ニキは『女性は生物学上、慎重だし、気配りもできる、女性がこの世を作っていけばもっと上手く行く事があるはず、』『わたしは社会は変えられないけど、ビジョンを提示することはできるわ、』と美術家らしい発言をし、科学重視だけの価値観の先は男だって生きにくい社会になる、人間は直感的なものやもっと悪魔的な面がある生き物、ということを語っているシーンもありました。『しなやかな革命』と彼女を表現しているタイトルはぴったりだなぁ、と思いました。
*幸せそうな男女の姿と美しい木、まさに祝福する木
では今現代.....彼女の活躍した1960~70年代の頃に提示したビジョンがより具体的に現実化しているのでは?確かに周りを見て日本でも少しずつですが女性の活躍の場が増えているようにみえます。これを書いている私も女性です。あまり関係はないかもですが、ニキの展示に行こうと思ったのも直感で、書いているこの文も失礼ですが本能に近い感覚で書いています。全てが直感ではいけませんが、ニキのいう人間的なものを大切にしたいです。例えば、なぜだか分からないけれど、『OOした方がいい気がする...』『いや、そっちではない、こっち、それはダメ』とか、今思えば直感がきっかけで後から一応、社会的に通じる理由を考えて作っていた時もあったかもしれません。
*ヨッ!巨大バルーンのナナ
社会の風潮からか、今までのように固い頭だけで社会を動かすには限界があると強く感じます。ナナのようにボヨ〜ンとしながら逆立ちしたり、おしりを突き出して鳥にしがみついたり、思い込みやしがらみから解き放つことができたら何か違う風景が待っているのではないか?自由とは非常に難しい言葉ですが自由とは何か?を何度もあきらめずに自分の本音を聞いて、考えて行動していくこと、ニキの展示からその重要性の再確認をさせてもらいました。そしてそれを考えることはきっと楽しいことなのです。
*このまま飛んでどこかへ行きたい!
ある日、弊社の社長が(ありがたいことに)送られて来る履歴書を眺めながら、『ここ最近ずっと、いいな、と思う人は大体女性なんだよなぁ〜』とつぶやいているのを聞きました。彼なりの直感でしょうか、何故だかその言葉が忘れられませんでした。この世は確実に何か変化している?政府の思惑だけではなく....?
もちろん直感だけでは会社は動かせませんが、篠原紙工にも女性社員が増えていて、若い社員も入ってきています。私は社会がどんなに理想像を求めようともあまり右往左往されずにその人が心地よく自由に生きられる、私がニキの作品であるナナを見て感じたようなことが、誰かにできたらいいな、なんて思いました。
*どーん....とたたずむナナ仏像?
日本とも繋がりが深かった彼女は仏教にも影響を受け、精神世界を表現するように
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