ご存知ですか?パッド印刷機 「なんでもくん」

先日、足立区の江北(こうほく)にある印刷会社 安心堂さんへ行ってきました。おそらく?初めて乗った日暮里舎人ライナー。車内はこじんまりとしたいい雰囲気でこれから伺う印刷会社の地域がどんな様子かを想像しました。

住宅街の中を歩いて行くと入り口がちょっとオシャレな建物を発見、そちらが安心堂さんです。ここでは試作工場という名前でフリーランスや個人の方が気軽に印刷機を使えるように会員制で工場を公開し、シルクスクリーン印刷とパッド印刷が使えるようになっています。はて....パッド印刷という印刷機、私は聞いたことも見たことも、まったく存じませんでした。

 

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*こちら、なんでもくん

 パッド印刷とはシリコンでできているパッドを使用し、凹版からインキを拾い、転写する印刷方法。

シリコンゴムで柔らかいから曲面にも印刷できるというのが特徴。例えばコーヒー屋さんのプラスチックカップとかボールに印刷できたり(すごく柔らかい、版は付いていないゴムハンコ、と考えると分かりやすいですかね?)

 

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*↑版にインキを引きます

 

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*小さくてみえないかな?パンダの絵柄。水色のがシリコンパッド

 

一緒に見学に行った方々は皆さん印刷に詳しい方ばかり。パッド印刷はもちろん知っているよ、という感じで、私にこの印刷機が理解できるだろうか…とちょっと不安の中、会長さんのお話が始まりました。

 

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*ブニーっと押します (お箸に印刷させてもらいました)

 

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*お箸に無事に転写

 

実は暑さのせいか頭がもうろうとしていた私ですが、会長さんのエネルギッシュなある言葉で目が覚めました。

 

「色々厳しい世の中かもしれないけれど、アイデア次第でいくらでも仕事はできるしニッチなところにこそ面白い仕事は溢れているんですよ」とおっしゃっていました。勇気溢れる言葉だなぁ、と思いました。

 

「世の中には隙間がいっぱいあるんです」と。この言葉の裏にはお客さんがどんなことを必要としていてどういうサービスを提供したら喜ばれるか、ということを追求してきた方が言える言葉だと思いました。毎度のことですが私はその会社で仕事をする方々の心意気に注目してしまいます。私はこの会長さんの仕事に対する姿勢、考え方、そしてアナログさを上手く活用するユニークさに魅かれました。

 

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*安心堂の会長さんであり特殊印刷 技術部の丸山さん 

 

そして会長さんがエネルギーを注いだ結果の製品が手動式小型パッド印刷機『なんでもくん』(いいネームング)どんな物にでも印刷しちゃいます。印刷って紙だけではなく、私たちの身の回りには数えきれないほどあって、知らず知らずのうちにいろんな情報が印刷という手法で私たちの思考に入ってるのだな、と思いました。例えば、誰かが街でアイスコーヒーを飲んでたとしてふと、そのカップを見てドトールなのかスターバックスなのか、という一瞬の判断も一つの情報手段ですよね。あっ、今日はドトールに行こう、と無意識にお店に行ってるかもしれません!これだって印刷がなければこうならないかもしれない。

 

 

そして印刷することで付加価値が増すものはたくさんあります。あまり深く考えたことはなかったけれど、確かに製品を作って最後にラベルや印刷を施すだけでグンとその商品が魅力的になったり仕上げの意気が吹き込まれたようになります。「できた、完成、誕生!」という、あの感じ。安心堂さんの工房の雰囲気やお話を聞いていると子供の頃、ものを作った時の喜び、みたいなものが鮮明に蘇させられるような気持ちになりました。

 

 

子供の頃は言葉にはできなかったけれど制作した時の喜びって達成感だけでなくておそらくその先の誰かに喜んでもらいたい、という気持ちも無意識のうちにあったのかもしれません。作ったものを誰かに褒めてもらったり、プレゼントして相手に喜んでもらったり、誰かの役に立ったり。究極のところ大人になってもその喜びの本質は変わっていなくて大人になるとそれを仕事ということを通して喜びを循環させているのかもしれません。

 

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*なぜか窓枠のサッシに印刷、これはより小さい小型パッド印刷機「どこでもくん」だと可能 

 

デザイナーさん達から生まれたせっかくのアイデアを1枚からでも印刷して形にしてあげたい。安心堂さんは機械を開発してデザイナーさん達やそれを必要とされる人に喜ばれ、デザイナーさん達はまたその先のクライアントに喜ばれ、改めて私たちは誰かの役に立ったと感じられた時に何というか、幸福感みたいなものに包まれて、そしてまた頑張ろうと思えるのだと思います。

 

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*こんなモノ達に印刷できます

 

機械を開発しちゃうなんてすごいなぁ〜、どんな才能の持ち主がやるんだろう、と完全文系の私はよく憧れるのですが、何かの才能に優れている、というより誰かの役に立とう、と考えてれば結果、才能みたいなものは開花するのかもしれません。手の届かない憧れる才能よりも自分の持ってるものを最大限に目の前の人に使えば才能クンはやってくる。私もどこかの隙間で誰かのお役に立てていれば幸いです。

 

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