製本会社だけど、手を動かさない思考のワークショップ (多摩美術大学)
Factory 4Fでは毎年5月に多摩美術大学からワークショップの依頼を頂いております。ありがたいことに今年で4年目。
「パーソナルパブリッシング」という授業で、通常の本という枠に捕われず、より自由な発想と創造力で本を作る、という内容。学生さんは1年生から4年生、院生、聴講生も含め学年学科も様々です。
初年度は紙1枚を折って切って本を作るという内容で私が担当。その翌年からは篠原紙工で手加工担当であり、造本家として活躍もしている 新島 龍彦を Tatsuhiko Niijima Portforiow中心に、「ジャバラ綴じ」「冊子綴じ」「糊とじ」と製本の基本をその後の制作にも応用がきくようなシンプルな内容で2年間授業を進めてきました。
今年もそのやり方で、「造本家 新島龍彦の授業」として全てをバトンタッチしてもいいかも?と思っていたのです、
が、、、
多摩美の講師の方々から生徒の最終制作物に変化があまり感じられず、少しワークショップの内容を変えてもらいたい、との依頼が来ました。
お話を聞いていると、学生の創造性があまり見られず、なんとなく課題を提出してしまっているのかも?というように感じられました。
うーん、けっこう考えさせられるお題です。
*学生さんに事前に質問を投げかけるため、三つ目綴じで質問集ノートを手作りいたしました。
思考の整理、自分が何をしたいのか、を理解することは学問においても仕事においてもこれから生きる上でも非常に重要な部分。
篠原紙工のメンバーともこういう...答えの出にくい話はよくしているのですが、話すことによって少し思考が整理されたりして次に進めることがあります。
この感じが多摩美でも出せないかな?と思い、今年はディスカッションと手を動かす実技と2つのワークショップを行なってみることにしました。製本会社だからといって手を動かすだけがワークショップじゃないよね、という考えをもとに。
とはいえ、ディスカッションってどうしよう.....だったのですが。
いくつかざっくりしたアイデアから仲間に伝えていくと少しずつ形になり、自分も新しいアイデアが出てきたりして、
考えは人に話した方が良い、というのはこういうことか。と実感した良いミーティングができました。
*自分にとって本は中身?それとも形が好き?仲間同士でも色々考えが出てきました。
篠原紙工では「疑問を持つ」ということを一つ大事にしていて、これって仕事以外でも大事なことだな、と思うことがよくあります。
「OOがこの機械でできないのは何故だろう?」「何故、お客さんはこういう形にしたいのだろう?」と、「なぜ?」と問いかけるのは、、、
答えが簡単に出ず、立ち止まって考えなければならない作業なのでけっこうキツいですが、常に自分に問いかけるのは自分をより良く生きるツールになる気がするのです。
多摩美の学生さんにも「なぜ、このパーソナルパブリッシングを受けることにしたのか?」「この授業を受けてどうしたいのか?」「そもそも本とは何だ?」
と本質的な質問を投げかけて考えや意見の交換ができればきっと制作への取り組み方も変わるのではないか…?ということを期待をして、私達も準備しています。
*チクチク針と糸で、質問集作り
人の前で意見を発言したりすることが苦手な人も多いかもしれないけれど、この授業をきっかけに出会った人達のコミュニケーションを楽しみながらこの時間、この空間にいるだけでも刺激されるような授業を作り上げてきたいと思います。T