本について。話し合う/多摩美術大学
2週にかけて多摩美術大学でワークショップを行ってきました。
『パーソナルパブリッシング』という自分でオリジナルの本を作る授業。
数年前から多摩美では製本ワークショップの枠を頂いているのですが、製本屋として初の試み、ディスカッション形式。
(なぜに、製本屋がこんなワークショップをすることになったかは前回のブログ
をご覧ください。)
*前回のブログ↓
「私にとって本とは何だろう?」
「どうしてパーソナルパブリッシングの授業を受けようと思ったのだろう?」
「私にとって本は中身?それとも本というその物として興味ある?」
「最終的にこの授業を受けて何を得たい?」
など、ちょっと一言では表せられない質問を投げかけてみました。
当日は約30名近くの学生さんが集まり、椅子を円形に並べたのですが、思ったより大きな円形で…少し緊張でしたが、始まると自分の感覚に任せ、学生さん一人一人に話しかけるつもりで楽しむことができました。
印象に残っているのはディスカッションで他者の意見を聞いているうちに自分は本の中身というより、紙、触り心地、印刷の匂い、そういうことの方が今は興味ある、ということに気づいた。という学生さんがいたこと。
私自身のこの授業の目的として、学生さんが話し合い、他者の意見を聞くことで自分自身の考えが浮き彫りになって自分自身を知るきっかけになってくれたらいいな、と思っていたのでとても嬉しい瞬間でした。
本とは情報を文字や絵を用いて記録したもの、と私はざっくり捉えているのですが、
どうしても紙でなければならないの?
石やはたまた椅子の上に!情報を書いたものは本じゃないの?など、
いろんな意見が飛び交いました。
私のざっくりした定義の中には「紙でなければならない」
とはなかったのですが、かといって石や椅子に書かれたら、
本とは感じられないだろうなぁ、という自分がいました。
でも本っぽい形(束ねて綴じてある)をしていたら、ガラスだろうが、石だろうが、
木材だろうが、本と言ってしまうかもしれない….
なんとも自分のあやふやな本に対する定義にも気づかされ、途中、考え込んでしまいたくなるような場面もありました。
*私たちの学生時代の作品も持って行きました
ある生徒さんはお母様に「本は五感で楽しむものよ」と言われてて育ったそうです。なんと素敵な。
ちょっとだけ、話が飛びますが、
私もここ最近、五感って思う以上に大切でしかも鈍ってるんじゃないかな?なんて思うことがあり、会社での休憩時間のお茶の入れ方に注目してみることにしました。
茶葉からお湯を入れて葉が開く様子を見て楽しみ、蒸らしている際の香り、茶器の温かさ、味わい、またそれを美味しいと思う感覚など。社員とその時間を共有しています。大変地味な、しかもゆとりが無いとできないことかもしれませんが大事だと思っています。
彼女の意見から本、書籍だってそうした楽しみがあっておかしくない、と気づかされました。なぜなら、私は完璧に本は形よりコンテンツ重視なので私はこれから読む本は全て電子書籍でいいかな〜。
なーんて思ってkindleを使っていたのですが、ここ最近、電子版だと「読んだ」という実感が何となく薄いような気がしてならないのです。それは私の読書法の問題かもしれませんが...。
なのでまだ、紙の本なのか、電子書籍なのか、行ったり来たりの状態です。
しかし多摩美のワークショップ以降は電子版がでている書籍にも関わらず、なんと!紙の本を買っています。実は私自身が「私にとって本とは何なんだ?」という問題に直面し、彼らとのワークショップで一番影響を受けているのかもしれません。
次回は手を動かす実習ワークショップの様子を書きたいと思います。T