ドイツ装の制作風景

4F BOXには12種類の製本・紙加工見本帳が入っております。

ユニークな折り方、綴じ方とそれらがどのように作られるかの説明書付。

 

紙が好きな人、製本に興味がある人、デザイナー、印刷会社の営業さん....紙媒体のものを作る時にいつもと同じような感じになってしまう、そういう方のインスピレーションを刺激するような内容になっています。

 

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そのうちの12番、「ドイツ装」というのがあります。なぜ「ドイツ」というのかは謎なのですがこの製本は表紙の表と裏に厚紙を貼付けた形のことを言います。

  

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写真に写っているのは本文、糸など使っていない無線綴じの製本です。表紙のないノートを想像してもらうと分かりやすいかな? 

 

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そのまっさらなノートの表と裏に厚紙この⑫と印刷されている厚紙を糊で貼付けていきます!

 

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これが 「糊付け機」。社長が色々と指示をして作ったオーダーメイド。機械ってそんな簡単にできるんだ....オーダーメイドできるんだ。この業界に入って思いました。このローラーの間に厚紙を通します。一瞬で全面に糊がつきます。

 

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 そして本文に手で貼付けていきます。位置がズレないように!

 

 機械があるから、簡単にたくさんできるのが工場でしょ?

と思われるかもしれませんが物によって機械を微妙に調整するのは人間。この糊付け機もその厚紙の厚みにあわせてローラーを調節せねば糊のつき具合がまばらできちんと製本できません。

 それに『まぁ、このくらいで、いっか、、、』で黙々とつい惰性で何百部もやってしまおうものなら結果、大きなロスになります。材料も、時間も、労力も。恐ろしい!

 

なので一連の仕事の流れを考えて準備することが大切です。それが慣れて早くなればなるほど生産性も上がるし、その機械を操る人の能力なんだなぁ、とこの工場にいて思います。

 

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準備ができたら修行僧のように黙々と手を動かします。写真は表裏貼付けた物を重ねて板を途中で挟んでる状態。

 

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どどーん。

重しをのせます。この重しもオーダーメイド。10kgです。

 

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油圧式プレス機。この機械も作っていただきました。先ほどの10kgの重しで少し落ち着いたらあとはこの機械で一気にプレス。

 

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 挟まれているの見えますか??

 

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ドイツ装の一番分かりやすい特徴、本の背はむき出しです。

 

 

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*こんな感じで新島さん(左)と新しく会社のメンバーになった新井さん(右)とで作業しております。

 

紙媒体のものが段々消えつつあるこの世の中で少しでも手に取る面白さ、紙ならではの表現を多くの方に知ってもらえたら嬉しいです。

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江東区の歩くワクワクを作る

『地域を盛上げていこう!』という動きは日本全国あります。

私は比較的に東京から近い地方出身者ですが両親は関西であるせいか、生まれ育った土着の文化にどうしても一歩引き気味で、県民アイデンティティのようなものがありません。なので故郷に対する情熱が薄く、故郷を熱く語る人に出会うと羨ましいです。

 

日本人としてのアイデンティティみたいなものはあるけれど、それより一歩狭い世界になるとどうしても自分が根無し草の様に感じてしまいます。それもいかがなものでしょう...。

 

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* 和船に乗る体験ができる!https://www.city.koto.lg.jp/seikatsu/douro/7476/7477.html

 

ところがFactory 4F(篠原紙工)で仕事をするようになってから『根っから東京!』という文化に触れている感じがします。

 東京の下町と言うか、家族代々からの工場経営だったり、近所や業界同士のことを考えて仕事を回していたりと私がこれまで働いた組織とは全く違う空気。今まで思ってた東京のイメージとは違い、私にとっては新しい文化に触れさせてもらっています。

 故郷でなくとも仕事を通して少しは郷土愛みたいなものに触れられるかも...と思っています。

 

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そして地方出身者からしてみたら東京はこれ以上盛上げる必要はないのでは?

と思っていたのにいざ中に入ってみると東京の区間で微妙に違う文化があったり、制度が大きく違っていたり、人の様子も違っていたりと東京って広い!どの区も盛上げていこうとガンバってるんだなぁ、これこそ活気か、と思います。

 そしてFactory 4Fは江東区に所在しております。縁あって江東区や葛飾区出身で自分たちの住む街をより良くしていきたい、という若い人達の出会いに恵まれFactory 4Fとしても何か協力できないかと只今模索中であります。模索と言っても単なる話し合いではなく実際に街や江東区周辺にある水辺を散策してあーだ、こーだ、と話しながらの模索でとても楽しく、歴史や自然の勉強になります。

 

それこそ江東区周辺のおもしろさでここらは入り組んだ川がたくさんあるのです。素人にはどこがどう繋がってどれが何の川なのかさっぱりです....が、メンバーの中に水辺の自然環境に詳しい方や江東区のことを何でも知ってる人がいるので少しずつ頭の中で地図や知識をつなげています。

 

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*小名木川をひたすら歩き、どうしたらより楽しめるか?と

 

東京街案内というと全体的にお店紹介が多い所が注目され、江東区だと清澄白河がそれに適した人気のエリアです。オシャレなお店や飲食店も多く週末になると東京に住んでいる?と思われる観光客が多く見られ不思議ですがこのブームは江東区にはありがたい。

 

しかしその清澄白河周辺だけで買い物や食事をしてFactory 4Fのある方まで来る人はほぼいないと思われる。確かに魅力的なお店はないかも...だけど。清澄白河で遊んだ後ただ川に沿って歩くというのも悪くはないんじゃ?お金を使わない遊びの一つとして。

 

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*かかしコンクール in 清澄白河 たまごの卵白を表現、でいいのでしょう。

 

私はモノにお金を使わない日、お金に頼らない遊びというのがこの世にもっともっとあって良いと思っています。それには消費者の楽しむということに対して意識の変化がないと簡単には普及しないと思うけれど、そんなちょっと変わった、新しい価値観がFactory 4Fや江東区を愛する若者達と作っていけたら良いな、と考えています。

 

小さいことだけれど動いていきますのでお楽しみに。

 

 

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 *工場と自然、相反するものでも共存していければ

 

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*謎な実、江東区にはこの木がたくさんあるとか

 

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新年も日々の延長

明けましておめでとうございます。

年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか?Factory 4Fでは年末1、2階の工場はペンキ塗り、Factory 4F は必要ないモノを処分したりと片付け&大掃除でした。 

私も机周りの紙類を処分しましたが、大掃除とは年末の行事の一つで掃除や片付けは毎日の行いなんだよね....とシンナー臭い中ボーッとしながら自分に言い聞かせていました。片付けや掃除は終わりのない仕事です。よし、もっと日々頑張ろう....とちょっと自分の情けなさを感じている中、とても嬉しいお知らせが届きました。

12月上旬に行ったsilhouette books主催のワークショップに対するお礼の手紙です。開けてみると可愛らしい文体で文字が書かれていました。差出人はワークショップに保育士の方が参加されていたのですがその方とその園児さん(5歳)からのお礼でした。そして先生からの素晴らしいレポート付!子供達がどのように制作をしていたのかが一目で分かる内容でした。このワークショップで学んだことを保育園で活かしてくださった保育士さんに心から感謝です。大変嬉しい!

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この代表?に選ばれた子の作品を読むととても幸せな家庭に育っている様に私には見えました。

ベッドで笑顔で眠っている自分?ちゃんとスリッパもあって、お家にはクリスマスツリーもあって、部屋もデコレーションしてあるのか?なんてその子がどんな子か想像は広がりますが、もしかしたらこれはこの子の想像の世界かもしれない、とも感じます。『ワタシの思うクリスマスってこんな感じ!』と子供ながらに何か理想や感じることはあるでしょう。

時計の針は夜中12時、5歳からしてみたらこの時間は遥か彼方遠い時間と思っているのではないでしょうか。私は子供の頃そうでした。夜中12時は何か特別な時間と思ってました。それを過ぎたらどうなるんだろう?とか

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きっと子供達はまた来年(もう今年)の12月クリスマスとかお正月が楽しみでしょう。

では大人は?

年末年始はちょっと苦手な方って多いのでは?私は特に社会人になってからいつも何か腑に落ちない感覚がありました。落ち着かないというか、楽しいんだけど妙にソワソワするあの感じ。どうしたらもっと穏やかに過ごせるだろう?と考えていました。まだ模索中ですが単純に年末も年始も自分の中であまり特別扱いしないというのがここ数年で出た答えです。

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どうしても環境や周りの情報によって心がソワソワ、忙しい!あれもしなくちゃ!これできてない!となりがちですが、それは自分がまだ修行が足りず周囲に影響をされてしまう未熟者ということで。なのでまた来年勝負です。年に1度しか味わえないあの妙な雰囲気なのでなかなか実践が難しいですが、歳を重ねるごとにどんな環境にいても穏やかになれたらなぁと毎年.....思うのです。来年はもっと良い年末年始にしようと思うとある意味、成長する喜び、大人の楽しみはそこかな?と思います。

 

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ストーリーを作るワークショップ

今月の初め、silhouette books のワークショップが開かれました。

 4Fでワークショップやイベントを開くようになって今では臨機応変に対応できたり予測ができるようになりましたが始めの頃は緊張をかくすことにもエネルギーを使っていたことを思い出します。

 

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 *レーザーで加工されたポップアップの中身

造本デザイナーの中村麻由美さんをはじめ、徐々に外部からワークショップを行ってくれる方々にも出会い、計画から実行まで4Fのスタッフとして携わるのですが、ワークショップは準備が大事だなとつくづく思います。

 

しかも時間や人数によっても内容も微妙に変化するのでどれくらい人が集まるか、ある程度見越してプランをいくつか予想しなければなりません。

 

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今回のsilhouette booksのワークショップも企画段階から携わっていたのですが著者の一人であり篠原紙工の社員でもある新島さんが仕事の後残ってコツコツと準備を進めてくれたので4Fとしては当日のサポートのお仕事でした。

 彼らはクールに材料に無駄もなく準備をしていてさすが慣れていました。 

 

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ワークショップだけを専門としているプロはどのように進めているのだろう.....?

Factory 4Fの仕事を通して一つの物を作るのにワークショップの段階でどこからどこまでをお客さんがやるか、というのも準備の大きなポイントであることに気がつきました。紙を切る段階からやるのか、紙は用意されていて折って切るだけなのか、貼るだけなのか。

 

限られた時間に物を完成させるとなるとどうしてもある程度の下準備は重要。ですが私はこの下準備こそがけっこう物を作る上では本当の勉強になるのではないかと思います。

 例えば、紙を折る作業だとしてもその紙が水平直角に切れてないと折っても仕上がりが美しくないし紙の目のことを知ってないと糊をつけた時にゆがみが出てしまう。そういうことを知っているかどうかで仕上がりが全然違います。

  

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しかしこのような考えはあくまでも自分で知識と技術を得て自分一人でも何かを作りたい.....!という人の考えであってワークショップはそんな難しいことを抜きにして楽しむこと、何か新しいことを知るきっかけであることが最も重要かと最終的には思います。こうるさいこと言わないで楽しむ、ですね。

 今回のワークショップは影絵の仕掛けを作り、そしてポストカードにイラスト等を入れて物語を作るという工程がありました。

子供は自由に絵を描くのは何となく想像できるのですが大人だと考え込むかな?と予測したのですが思いのほか皆さん楽しんで描いていました。この日のお客さんはわりと創造力を使うことにあまり戸惑いがなかったのかも。

 

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当たり前なのですが仕上がった作品は全て違い、いろんな人がいるんだなぁ、としみじみと感じました。

お客さんが各自物語を作った背景を解説している時に小学生の頃、国語の作文の時間や美術や図画工作でクラスメイトの作品を見たり読んだりすることが好きだったことを思い出しました。

 

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ふと、なぜ好きだったんだろう?

と理由を考えたのですがおそらくクラスメイトの違う一面を知ることができる、からだったのかな?と思います。『あの子、こんなこと書くんだ、』『絵上手いのいいなぁ、意外と細かいんだ、』とか、今思うとずいぶんませた子供です。

それほど私にとって人というのは良し悪し含めてずっと興味のある対象です。

 

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*どんなストーリーを書いたか説明

そしてありがたいことにFactory 4Fを通していろんな方とお会いすることができています。

 

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*この日は可愛らしい子がたくさんいました

 

この日のお客さんで時間内に満足できる物が仕上がらなかったのか残ってイラストを仕上げているお客さんがいました。作ってハイ終わり、というのが普通かと思いますが、気にせずゆっくりと残っていられる空間や雰囲気?をFactory 4Fが提供できていたのなら嬉しいです。

 

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*浮かび上がるシルエット

 

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*SILHOUETTE BOOKSの梶原恵さんと新島龍彦さんの携わった作品達  

詳しくはHP silhouette books

 

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新しい機械入りました!そしてその子との相性

篠原紙工ではミシン綴じという製本方法があります。Factory 4F、篠原紙工の4階にそのミシンはあり、綴じ作業が行われております。一応工業用ですが製本用というわけではなく洋服を縫う専用の機械です。

 

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*販売している紙加工見本セット 4F BOX  Factory 4F に入っているno.11の平ミシン綴じ ももちろん彼女が縫いました

 

担当しているのは佐藤さん。元アパレルにいた彼女なので紙より布に愛を感じるのは分かります。なのになぜ今は製本の業界へ....?お互いの人生経験の話をすると、『本当、なんでかねぇ~』と笑って話しているのですが、ある時こんなことを言っているのが印象的でした。『自分がパターンをひいた洋服を街の中で見るのが夢』だと。それは今のところまだ叶ってないけれど、それが『服』ではなくて『冊子』という点においては叶っている。これは彼女の話だけではない、夢の叶う形ってどう出るか分からないからおもしろい。

 

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*今私と2人で製作中のワンピースのパターン、もちろん佐藤さん作

 

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*パターンの製作中  

 

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*4階にある佐藤さんミシン 

 

 でもこのミシン綴じは佐藤さんとファッション業界の縁を繋げているのでしょうか?アパレル系の冊子でよく使われ、篠原紙工の中で人気なお仕事でもあります。数千部のミシン縫いをこの、東京の、大島の、篠原紙工の4階で彼女一人が縫っていて、それがこの日本の世に出回っていると思うとすごい。

 ミシンの仕事が入ってくると彼女はフル稼働、なのですがあんまり忙しそうにしている様子は見えない。むしろ彼女よりミシンの音の方が忙しさを表しています。物によっては縫われる音が微妙に違い、そして彼女が糸切りばさみを机に置く音がある程度一定なのが面白い。その音が一日中テンポ良く響くのです。ということは、やっぱり機械と機械を操る人というのはある程度一心同体になっているのでしょう。

  

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*糸切りハサミとちゃんと糸くずを入れるゴミ箱がある

 

 なんて私はのんきにパソコンを打ちながら思います。おそらく、ミシンだけでなく篠原紙工の工場で働く人全員が何かしらそういう感覚はあると思います。私が1階と2階でパソコン仕事をしたらそういう所ももっと見えるかもしれない。しかし、残念ながらあの大きな機械音の中で私の精神状態はもちそうにないけれど。

 

オシャレな冊子に人気なミシン綴じ、他にも案件が増えてきて佐藤さん一人でやるには限界もあり、篠原社長が動きました。いつもお世話になっている機械屋さんにミシンの機械をオーダーメイド。しかも中古のミシン?とか何やらいろんな物を合体させ作ったとか。かなり時間もかかって、社長も佐藤さんもあーだ、こーだ、と機械屋さんと相談していました。

 

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*この人(機械)です

まるで新型ロボットを作っている親のようにも見えました。そして最近やっと!我が子(機械)が篠原紙工へ。それも2階の工場に。あんまり興奮する様子もない佐藤さんに新しい子が入ってきた気持ちを聞くと、あんまりこのこの子(機械)の扱いがピンと来ないと。その時に彼女の口から出てきた言葉が

『この子と相性があうか、心配だわ~』

 

何を?言う?と思われる方もいるかな?

 

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*エスプレッソマシーン、全然コーヒーに詳しくないのにこれを使うのが楽しくて長年付き合ってます 

 

私も日々、些細な日用品を選ぶ時でもそういうことを頻繁に思うのでこの言葉がすごく心に響きます。どんな小さい物でも使い心地が良かったり、自分の感覚や手に合ったり、相性はあると思うのでそれが仕事の機械ともなれば仲良くならないと篠原紙工では仕事になりません。馴染みがないものを使う不安さからそういう言葉が出て来るのかもしれませんが佐藤さんには頑張って慣れて自分のものにしてもらうしかありません!

 

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何度も書きますが工場にいるととにかく物に囲まれています、しかも大型の物。そしてそこから流れてくる大量生産の出来上がる物達。エネルギー満載の空間なのです。なのでその物そのものが持つ力や価値を発揮させないと単なる大きな物質。悲しい存在にならないためにも操るオペレーターさんには機械と仲良くなって可愛がってほしいです。

 

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*NEWミシン、人が流すだけで自動的に縫ってくれるとか

 

自分が手がけたものを街の中で見るのが夢、この新しい機械を導入すれば大量生産を効率よくできて出会うチャンスも増えるかも?でも、ミシンは手先も足も使う機械だし、もしかしたら自分の技術力を使った感じはちょっと消えるかもしれませんね。

 

いつか紙じゃなくて彼女が手がけた洋服が街の中で見れる夢が叶うといいなぁ。篠原紙工で洋裁の相談受け付けましょうか、街でも着れるカッコいい工場作業着とか。

 

新しい機械が佐藤さんと仲良く稼働する日が来るのを楽しみにしております。

 

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殻も何もかもピストルで撃ってみよう!

このブログに目を通してくださっている方は工場だけでなく美術館へ行くのが好きな方もいらっしゃるでしょう。Factory 4Fの属する篠原紙工でも美術館関連のお仕事をさせていただいています。

正直なところ、わたしにとって美術館はものすごくエネルギーをとられる場所として思い込んでました。特に現代アートというのは複雑難解で分からない自分はその作家の聖域に立ち入ってはいけない気がしてなりませんでした。アートに対する劣等感みたいなものだったと思います。とはいえども美術の世界とは付かず離れずの関係で今に至ります。

 

 

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数ヶ月前、篠原紙工が関わった関係である美術館の招待券をいただき、久しぶりに美術館へ行きました。相当久しぶりだったからでしょうか、驚いた事にとても楽しい時間が過ごせました。2枚あったので2日間連日で行ったくらいです。(そのお話も後日できたらと思います)なにも特別なきっかけがあったわけではありませんが、単純に今までが自分の思う以上に凝り固まった考えで物事を判断していたのでしょう。(今でもまだまだですが...)

 少なからずとも人生経験を重ねてくると現代アートの中にも自分と重なる部分を見つける事ができて、今では自分なりの味い方、楽しみ方ができるようになったのではないか、と思います。その日をきっかけにもっと気軽に美術館へ行こうと思うようになりました。

 

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今回お話しするのはその招待券を頂いた展示会ではないのですが、『行かねば』と直感的に思った展示会です。知ってる方もたくさんいると思いますが新国立美術館で行われていたフランス人美術家のニキ・ド・サンファルです。(昨日で展示は終了です...)

 

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 *ニキ・ド・サンファル(1930-2002)

 

太った女性の像『ナナ』で有名な彼女、おそらくどこかで見たことがある人も多いはず。私も彼女の代表作をちらりと知っている程度でしたが改めて彼女の作品を見て自由で気持ちよさを感じました。ボヨーンとしたナナの身体は女性性を丸出しです。愛らしくも、ものすごく主張が激しいところに魅かれます。

 

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*ボヨ〜ン、と踊るナナ!

 

彼女の生い立ちや、時代背景、日本との繋がり、知らないことばかりで改めてニキ・ド・サンファルについて学び、魅了されてしまいした。そして、もしかしたら展示会の仕掛人の思うツボ?かもしれませんが、今の社会において女性の生き方について考えさせられるものがありました。

 

今、社会ではできれば女性にはバリバリと働いてもらいたく、子供も生んでもらいたくて、そして、美しくもあってほしい、よく言われる『母であり、妻であり、女であり』という言葉です。否定的にとらえるつもりはないですが限られた人生の中で全部やるのは簡単、ではない....と思います。そもそも、そういう役割や性別も抜かしてまずはその人間自身を見つめる方が第一優先では?とも思いますがニキもそういう事を深く考えた美術家だったようです。 

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*ニキの作品でよく使われたモチーフ、ピストル、ナイフ、など自分の殻を破る象徴です 。

 

最近よく思うのですが、例えば国営放送であるNHKの女性が主役のドラマなどを見ていても女の人が社会を変えていくというような内容のものが多く、男の人はその女の人の活躍を支える、もしくは共にたくましく行きていく姿を描いていたり、ちょっとしたドキュメントや歴史上の人物の紹介も『女性』がメインだったりと、もちろん内容は充実していて面白く、刺激は受けるのですが...その反面、番組の背景からこの国がどんな女性像を求めているのかがうかがえます。なるほど、こういう風になってほしいのね。と

 

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*「射撃絵画」でアーティストになる決意表明をした時の彼女は強く美しい

 

このニキの展示会も女性が勇気づけられるようなメッセージやコンセプトが盛りだくさんです。ニキは『女性は生物学上、慎重だし、気配りもできる、女性がこの世を作っていけばもっと上手く行く事があるはず、』『わたしは社会は変えられないけど、ビジョンを提示することはできるわ、』と美術家らしい発言をし、科学重視だけの価値観の先は男だって生きにくい社会になる、人間は直感的なものやもっと悪魔的な面がある生き物、ということを語っているシーンもありました。『しなやかな革命』と彼女を表現しているタイトルはぴったりだなぁ、と思いました。

 

 

 

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*幸せそうな男女の姿と美しい木、まさに祝福する木

 

では今現代.....彼女の活躍した1960~70年代の頃に提示したビジョンがより具体的に現実化しているのでは?確かに周りを見て日本でも少しずつですが女性の活躍の場が増えているようにみえます。これを書いている私も女性です。あまり関係はないかもですが、ニキの展示に行こうと思ったのも直感で、書いているこの文も失礼ですが本能に近い感覚で書いています。全てが直感ではいけませんが、ニキのいう人間的なものを大切にしたいです。例えば、なぜだか分からないけれど、『OOした方がいい気がする...』『いや、そっちではない、こっち、それはダメ』とか、今思えば直感がきっかけで後から一応、社会的に通じる理由を考えて作っていた時もあったかもしれません。

 

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*ヨッ!巨大バルーンのナナ

 

社会の風潮からか、今までのように固い頭だけで社会を動かすには限界があると強く感じます。ナナのようにボヨ〜ンとしながら逆立ちしたり、おしりを突き出して鳥にしがみついたり、思い込みやしがらみから解き放つことができたら何か違う風景が待っているのではないか?自由とは非常に難しい言葉ですが自由とは何か?を何度もあきらめずに自分の本音を聞いて、考えて行動していくこと、ニキの展示からその重要性の再確認をさせてもらいました。そしてそれを考えることはきっと楽しいことなのです。

 

 

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*このまま飛んでどこかへ行きたい! 

 

ある日、弊社の社長が(ありがたいことに)送られて来る履歴書を眺めながら、『ここ最近ずっと、いいな、と思う人は大体女性なんだよなぁ〜』とつぶやいているのを聞きました。彼なりの直感でしょうか、何故だかその言葉が忘れられませんでした。この世は確実に何か変化している?政府の思惑だけではなく....?

 

もちろん直感だけでは会社は動かせませんが、篠原紙工にも女性社員が増えていて、若い社員も入ってきています。私は社会がどんなに理想像を求めようともあまり右往左往されずにその人が心地よく自由に生きられる、私がニキの作品であるナナを見て感じたようなことが、誰かにできたらいいな、なんて思いました。

  

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 *どーん....とたたずむナナ仏像?

日本とも繋がりが深かった彼女は仏教にも影響を受け、精神世界を表現するように

 

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カレンダーにまつわる思い出

篠原紙工のFactory 4F。ここも工場の一部なのでいろんな音が常にしてます。糊付け機、レーザー、プレス機、エレベーター、館内放送、インカム電話、会話、人が行き来する音...その中でFactory 4Fの文章を書いているのですがここ最近、独特な音が鳴り響いていました。

 正体は活版のテキン君、篠原紙工の来年のカレンダーのために『ガッチャン、ガッチャン』このテキン、しばらく使われてなかったのですが篠原紙工オリジナル手作りカレンダーの仕事でやっと本来の役目が果たされたのです。

 

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人もそうですがモノもきちんと本来の役割を与えられると生き生きするものです。それだけでなく機械を操る人のおかげか?もしれないけどテキンの周りがきちんと整理されて秩序だっている感じがします。何もする事がないと周囲に物が置かれて雑然としていくのです。機械にとっても人にとっても仕事があるって幸せな事です。

 

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 *あなたお好きな紙は何月ですか?

 

篠原紙工ではちょっとしたオリジナル製品を販売していこう計画があるのですがその第一弾がカレンダー。今の時期、街へ出ると手帳とともににたくさん売っています。世間はカレンダーにお金を出して買うのか…実は私は買った経験がほぼなく。

 

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*2016年のカレンダー、篠原紙工で活版印刷してます 

 おそらくもらったモノで用が済んでいたのだと思います。現に2015年は篠原紙工の会社カレンダーを使い、かなり役立ってくれました。私はたくさんの人と会うような仕事ではないので4Fのイベントやミーティングなど大まかな事をその卓上カレンダーに書き込むだけで何とかなったのです。

 

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*2015年、現在の篠原紙工会社カレンダーのそのままのありさま

 

私の予定を裏で支えてくれたカレンダー、今年からは篠原紙工でネット販売するということで、ちょっとドキドキします。買ってくれたその人と1年間一緒にいるモノですからその人のために、カレンダー自身のためにもしっかりと役割を果たして生き生きとしてもらいたいものです。

 

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*破かずに後ろにめくっていた後でカールがついています。

 

私の現在の2015年の篠原紙工カレンダー、のり綴じの技術とミシン目の加工、活版、そして紙は触り書き心地もよいアラベールが使われたものでした。卓上なので毎月終わったら破いて捨てていくタイプだとは思うのですが私の場合、そこに書き込んでいてしかも、過去の予定も知りたい時もあるのでミシン目を破かず後ろにめくっておきました。

 今や携帯に打ち込む方も多いかと思いますが(私も使います)紙の良さは一目で全体が見れ、手で書き込んだ記憶、身体の感覚というのも予定を忘れずにいることを手助けしていると思うのです。手帳があれば一番なのでしょうが、手帳を持ち歩くという事をここ数年はしてません。気に入った手帳がないのと、どうしても手帳となると自分が手帳に合わせなくちゃならない場面があるからか?と自分を分析します。

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*社員仲間の北川さんが年初めにもとから休みの日に○が付いているのにも関わらずその上からクレヨンで赤丸をつけていてその姿がぬり絵をする子供のようにとても愛らしかったのを覚えています。私も真似をしたら確かに楽しい気分になりました。

 

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*破かずに後ろにめくっていたのでさすがに10月くらいから重みで立たなくなってしまい、仕方なく1月から破って、黒クリップで留めるという状態に。

 

 カレンダーを買える時期が過ぎた頃にやっぱり欲しい、と思った時はワードでシンプルに作成した時もありました。月ごとでわりと書くスペースに余裕があってシンプルなのが一番、と思い、簡単なのを作っていたのです。そんな事していたなぁ、今回のカレンダーの文を書くにあたり、いくつか思い出した事があります。

 

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*本来はきちんと立つ卓上カレンダーです

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*1年間がんばった、あともう少しです

 私の育った家庭は朝日新聞だったのですが毎月初めにカレンダーが広告と一緒に入っていました。母は長い間それを愛用していて彼女の机の側の壁に貼ってありました。そして家族、子供の用事、自分の用事、それぞれが鉛筆で書かれているのです。私たち子供が家を離れた後は私たちが帰って来る日に『OO帰る』という風に。そしてその横の壁にはこれまたどこかのタクシー会社から毎年もらう物がありそれは父のカレンダー。こちらも鉛筆で線が引っ張ってあったりして『OOで名古屋、大阪』と書いてあったり、母はこれを共有して私たち子供に父の予定を話してくれていたのです。

 母は月初めにこのカレンダーがないと慌てて新聞ボックスに走り『あった、あった、このカレンダーが一番』ひとり言のように言っていました。そして、彼女も過去の予定も見る時があるようで12ヶ月分全て取ってあるのです。

 そんなちょっとした朝日新聞の付録カレンダーとその思い出ですが、ここ1~2年の間父と母のライフスタイルが変化し、とうとう新聞の購読をやめてしまったのです。家に帰って新聞をめくる楽しみも消えて寂しいのですが、私は何よりカレンダーの事が気になってしまいました。「カレンダーどうするの?」「まぁ、何か代用を探すわ」の一言。あっさりしていて潔いと思ったのを覚えています。

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*イラストも毎年違ってその月にまつわるメモがちょっとあったりして、子供の頃からチラっと読んだりしていました。

 今、母はカレンダーをどうしてるっけ?と考えるのですが、そのあるべき壁の様子が思い出せない。父のカレンダーは今でも存在し相変わらず忙しそうですが、母はもしかしたらもう予定なんて書きこむ必要もない、何かから解放された感じで楽しく生活しているのかもしれない。前みたいに家族や子供の細かい予定を知っておく必要もないし、忘れたって平気、自分の好きな事をしていればいいだけなのかもしれない。カレンダーってその人のその時の生活を表現するものです。

 

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*12月で最後、1年分ので日焼けしています。1月始めが少しでも印刷されてるともっと便利かも

 来年、篠原紙工のカレンダーをあなたの側においていただけたら嬉しいです。

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