職人とアーティストの共同作業
東京ステーションギャラリーで行われている『パリ、リトグラフ工房 idem から-現代アーティスト20人の叫びと囁き』というタイトルの展示に行ってきました。
*リトグラフとは平らな石の上に描画し、印刷する版画のこと。
メトロのフリーペーパーの中でこの写真広告を見つけた時に印刷工場の雰囲気がプンプンしたのでFactory 4Fに共通する何かが得られるかも、という思いで行ってきました。内容を調べると、パリに『idem』というリトグラフ工房があり、(Introduction : Idem Paris)そこではいろんな作家さんが出入りして職人さんと作品制作をしているようです。HPを見ると天窓から太陽光が降り注ぎ、緑もあってすごく素敵な空間です。
*HPより Introduction : Idem Paris
展示の館内は撮影禁止なので写真で紹介できないのが残念ですがリトグラフは独特なかすれの風合いがある印刷方法という感じがしました。展示では20名の作家がidemで制作した作品が展示されています。日本人だと やなぎみわ や 森山大道 の作品もありました。
この日は学芸員による解説があったので参加したのですが、一人で見る美術鑑賞と違い作家の背景等も聞けるので作品の鑑賞度がぐっと強まりました。学芸員さんと一緒に回って見たのはたぶん、、、初めて。
このidemという工房の中にはプリント職人さんがいて常連のアーティストの中には自分の表現にピタリと合うようにプリントを出してくれる職人さんと毎回コンビを組んで制作する方もいるそうです。映画監督のデヴィット・リンチや写真家のJRも工房に出入りする一人で、彼らによるによるidemの紹介映像では工房内でどのように1枚のプリントが職人によって出されるかが美しいドキュメントのように流れていました。
*私の中では『ツインピークス』のイメージですが、デヴィットリンチ(左)、 写真家 JR (右)
*けっこうきわどいことをする写真家のJRですが私はどこか彼の作品に魅かれます
ある作家は日本の和紙を使って作品制作をしていました。その和紙はものすごく薄く、機械のローラーでくっついてしまう可能性があるところをidemの職人が何とか工夫してプリントさせよう、というストーリーを学芸員さんから聞きました。そしてなんと、和紙を作った和紙職人も日本からパリに駆けつけて薄い和紙の上にどのようにプリントされるのかを立ち会いしたそうです。本当に物事にこだわれば最後の最後まで自分の目で見たいものです。それこそ職人精神だと思います。
展示を見ながらアーティストと職人の二人三脚、ということを考えました。
*idemの工房
コンセプト、制作、展示、プレゼン、と全てを自分でやらなくてはアーティストと言えない、と教育されてきた感じが....私はするのですが。このidemやFactory 4F のある篠原紙工で働いているとある部分はプロに任せても良いのかもしれないと思うようになりました。
なぜなら、面白いアイデアによって高い技術を持っている職人は力を発揮できるわけで、アーティストの中途半端な技術で美しくない物を見るよりかは完成度の高い美しいものを見たいという心が人にはあるからです。
篠原紙工、制作担当の社員にも『こういう風に作って欲しい、とかアイデアやデザインを言われないとできないなぁ...』と言う人もいます。もちろん、いろんな捉え方はありますがアート作品だとしても分散して一つのものを作るというやり方があってもいいのだ、と仕事を通して思えるようになりました。心が楽に広くなった感じです。
そんなことを考えていたら、ある美術系の学生さんが卒業制作を篠原紙工に依頼してきました。多くのスタッフは心のどこかで『えっ、自分で作るのが卒業制作の意義では?』と思ったようです。もちろん私にもその考えは頭に浮かんできました。しかし今では形を作るこよりも目には見えないけれどアイデアや思いつきの方により価値を置くようになり、そのアイデアを美しい形で見てみたいから是非、弊社で作る方向にならないかな、なんて思っていました。
*弊社の社員が学生の作品を制作図にしたもの
もちろん実案になり、スペシャルバージョン...として手加工チームの一人がコツコツと作っていました。
*『こういうのを作りたい...』学生が持ち込んだ制作サンプル
*これはこれで味のある作品です
*こんな形になりました。写真があまりよくなくて申し訳ない....。
このパリのidemでは創作意欲が湧きそうな空間ですがFactory 4Fにも少しは似たような空気感があるのではないか?と想像します。社員にもこの展示の紹介をしてみたところ、早速行ってくれたようでお互い『パリに行ったら見学してみたいね、』なんて話をしていました。
さて、展示会場から出る際に、どこかで見たことがあるチラシが.....次回の展示は画家のジョルジョ・モランディー展。このチラシのデザインはFactory 4Fとも関わりが深い、というかスタッフとして関わっている ALL RIGHT さんALL RIGHT GRAPHICS です。ここ東京ステーションギャラリーだとは知らず、これも何か不思議な縁?
この展示も是非行ってみたいです。
東京駅は美しいです。
この紹介した展示は2月7日まで、もし興味のある方は行ってみてください。
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セミナーレポート!印刷営業に製本・紙加工の知識をどう活かすか?
先日、我らFactory 4F代表の篠原が JAGAT(日本印刷技術協会)でセミナー講師を務めさせていただきました。
タイトルは『紙製品の表現を広げる後加工』
これをお題に、
○ 株式会社 NACAMURA さま
○ 株式会社 田中紙工 さま
○ 有限会社 篠原紙工(Factory 4F)
と3社がそれぞれ紙の後加工について自社の取り組みを話す、という内容のセミナーでした。
Factory 4Fの今後のセミナーのためにも勉強&撮影隊として篠原社長に同行してきました。
今回初めてJAGAT(ジャガット)のオフィスがある杉並区の方へ行ったのですが、とてもひっそりとした住宅街の中にあり、想像していた感じとはちょっと違いました。もっと大通りに面した大きな印刷協会!というイメージを勝手にしてました。
セミナーには20名程の方々が集まり、正直なところもう少しいてもいいのでは?と思いましたが集中して聞くにはこれくらいの方が良いかと思い直し、株式会社NACAMURA の中村さん、株式会社 田中紙工の田中さんのお話を聞かせていただきました。
両社ともに差別化できる技術、製品をもっており、この業界の先を考えながらチャレンジしているところに刺激を受けながらも、この業界の本当の大きな底上げとなるものは何だろうか....?
新製品を作ることなのか、新技術、働き方なのか、発信方法なのか、と私個人の考えを拾いながら聞いていました。Factory 4Fとしてもこの業界のために何ができるかというのはよく話題にすることです。
さて、最後は弊社の篠原社長のレクチャーです。
ちょっと笑ってしまったのですが、とても爽やかに大きな声で『みなさん!こんにちは!』の挨拶でスタート。声が通るので資料を見るために下を向いていた受講者の方々の顔が一瞬にして上がりました。
*本人が一番楽しそうでした
開場のスクリーンにはホームページを流すだけで篠原社長は大きな声で『僕、パワーポイントとか使って説明するの苦手なんで、喋りますね。その代わり簡単な資料が手元にありますのでそれを参考にしてください!』なんとも正直者でお喋りが大の得意な社長です。
『えっーとっ。このわたしのセミナーで何かを考えるきっかけ、、、明日からでも皆さんの会社に合わせやり方で新たな取り組みができるきっかけになれば嬉しです!』と篠原社長 独特の元気よい喋り方で発言していました。とても分かりやすい入りです。
*作成した資料、中には営業としての心構え、実践方法などが簡単に書かれています
弊社の得意とするいいかげん折り、のり綴じ、などサンプルも用意しましたが篠原社長が話すことは自社の製品解説というよりはクライアントとのやり取りの仕方、お客が望んでいることをそのお客自身以上にどううまく引き出すか、ということに焦点を当てていました。その上でだったらOO綴じ、OO折り、というようにお客さんのコンセプトや伝える内容を考えた上での提案力がいかに大切かということを伝えようとしていました。
例えば、お客さんのコンセプトもしっかりしていて、形も具体的な案がすでにあったとしてもそのコンセプトや内容でいえばこんな綴じ方、折り方、見せ方の方がより伝わるのでは?と新しいアイデアを提供する、という感じです。お客さんも『あっ、そういう表現方法もあるんだ...』とまたそこからより良いものができる間口が広がるのです。
これは紙の持つ特徴や実際に立体物として出来上がった時のそのモノのもつ雰囲気も想像がつかないとそういう新たな切り口のアイデア提案はできません。
毎日毎日....製本、紙加工に携わっているプロだからこその目線とデザイナーさんや広告代理店、美的センスを重視するお客さんのこと、はたまたその先の最終的なお客さんのことも想像できる能力も必要とされることだと思います。
プレイヤーでもある篠原社長、そしてもう一人、弊社の重要な営業プレイヤー北川さん。私は彼らの近くで仕事をしているので何となく肌でそういうことなのだろう、とは感じていたのですが今回セミナーの内容を写真撮影しながらですが聞いて、ちょっと再確認することができました。
*もうそろそろお時間です、社長。40分のところ、ジャスト1時間トーク!
おそらくこれ以上にもっと考えていることや信念みたいなものはあるでしょうが、私がここで言葉で表現するのは難しいのでやめておきます。
本人(篠原社長)から聞いた方がより正確な想いが伝わると思うのでこの続きはFactory 4Fの新しいセミナーにしようかな....?そんなアイデアが私の中に浮かびました。
どうですかね?こういうセミナー。皆さん意見ください!
なかなか長時間で受講者の方々も少々お疲れ気味の中、どうなることやら?とちょっとソワソワ、でもワクワクしながら我が上司のセミナーに耳を傾けたのですが、受講者の方々も聞き疲れて居眠り...ということもなく!一生懸命に聞いてくださっていました。
参加してくださった皆様、講師の方々、JAGATスタッフの方々、ありがとうございました。
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◎お知らせ 1月25日(月)製本の基本のきほんセミナー 19:00~ @Factory 4F
詳細&申し込みこちら
ドイツ装の制作風景
4F BOXには12種類の製本・紙加工見本帳が入っております。
ユニークな折り方、綴じ方とそれらがどのように作られるかの説明書付。
紙が好きな人、製本に興味がある人、デザイナー、印刷会社の営業さん....紙媒体のものを作る時にいつもと同じような感じになってしまう、そういう方のインスピレーションを刺激するような内容になっています。
そのうちの12番、「ドイツ装」というのがあります。なぜ「ドイツ」というのかは謎なのですがこの製本は表紙の表と裏に厚紙を貼付けた形のことを言います。
写真に写っているのは本文、糸など使っていない無線綴じの製本です。表紙のないノートを想像してもらうと分かりやすいかな?
そのまっさらなノートの表と裏に厚紙この⑫と印刷されている厚紙を糊で貼付けていきます!
これが 「糊付け機」。社長が色々と指示をして作ったオーダーメイド。機械ってそんな簡単にできるんだ....オーダーメイドできるんだ。この業界に入って思いました。このローラーの間に厚紙を通します。一瞬で全面に糊がつきます。
そして本文に手で貼付けていきます。位置がズレないように!
機械があるから、簡単にたくさんできるのが工場でしょ?
と思われるかもしれませんが物によって機械を微妙に調整するのは人間。この糊付け機もその厚紙の厚みにあわせてローラーを調節せねば糊のつき具合がまばらできちんと製本できません。
それに『まぁ、このくらいで、いっか、、、』で黙々とつい惰性で何百部もやってしまおうものなら結果、大きなロスになります。材料も、時間も、労力も。恐ろしい!
なので一連の仕事の流れを考えて準備することが大切です。それが慣れて早くなればなるほど生産性も上がるし、その機械を操る人の能力なんだなぁ、とこの工場にいて思います。
準備ができたら修行僧のように黙々と手を動かします。写真は表裏貼付けた物を重ねて板を途中で挟んでる状態。
どどーん。
重しをのせます。この重しもオーダーメイド。10kgです。
油圧式プレス機。この機械も作っていただきました。先ほどの10kgの重しで少し落ち着いたらあとはこの機械で一気にプレス。
挟まれているの見えますか??
ドイツ装の一番分かりやすい特徴、本の背はむき出しです。
*こんな感じで新島さん(左)と新しく会社のメンバーになった新井さん(右)とで作業しております。
紙媒体のものが段々消えつつあるこの世の中で少しでも手に取る面白さ、紙ならではの表現を多くの方に知ってもらえたら嬉しいです。
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江東区の歩くワクワクを作る
『地域を盛上げていこう!』という動きは日本全国あります。
私は比較的に東京から近い地方出身者ですが両親は関西であるせいか、生まれ育った土着の文化にどうしても一歩引き気味で、県民アイデンティティのようなものがありません。なので故郷に対する情熱が薄く、故郷を熱く語る人に出会うと羨ましいです。
日本人としてのアイデンティティみたいなものはあるけれど、それより一歩狭い世界になるとどうしても自分が根無し草の様に感じてしまいます。それもいかがなものでしょう...。
* 和船に乗る体験ができる!https://www.city.koto.lg.jp/seikatsu/douro/7476/7477.html
ところがFactory 4F(篠原紙工)で仕事をするようになってから『根っから東京!』という文化に触れている感じがします。
東京の下町と言うか、家族代々からの工場経営だったり、近所や業界同士のことを考えて仕事を回していたりと私がこれまで働いた組織とは全く違う空気。今まで思ってた東京のイメージとは違い、私にとっては新しい文化に触れさせてもらっています。
故郷でなくとも仕事を通して少しは郷土愛みたいなものに触れられるかも...と思っています。
そして地方出身者からしてみたら東京はこれ以上盛上げる必要はないのでは?
と思っていたのにいざ中に入ってみると東京の区間で微妙に違う文化があったり、制度が大きく違っていたり、人の様子も違っていたりと東京って広い!どの区も盛上げていこうとガンバってるんだなぁ、これこそ活気か、と思います。
そしてFactory 4Fは江東区に所在しております。縁あって江東区や葛飾区出身で自分たちの住む街をより良くしていきたい、という若い人達の出会いに恵まれFactory 4Fとしても何か協力できないかと只今模索中であります。模索と言っても単なる話し合いではなく実際に街や江東区周辺にある水辺を散策してあーだ、こーだ、と話しながらの模索でとても楽しく、歴史や自然の勉強になります。
それこそ江東区周辺のおもしろさでここらは入り組んだ川がたくさんあるのです。素人にはどこがどう繋がってどれが何の川なのかさっぱりです....が、メンバーの中に水辺の自然環境に詳しい方や江東区のことを何でも知ってる人がいるので少しずつ頭の中で地図や知識をつなげています。
*小名木川をひたすら歩き、どうしたらより楽しめるか?と
東京街案内というと全体的にお店紹介が多い所が注目され、江東区だと清澄白河がそれに適した人気のエリアです。オシャレなお店や飲食店も多く週末になると東京に住んでいる?と思われる観光客が多く見られ不思議ですがこのブームは江東区にはありがたい。
しかしその清澄白河周辺だけで買い物や食事をしてFactory 4Fのある方まで来る人はほぼいないと思われる。確かに魅力的なお店はないかも...だけど。清澄白河で遊んだ後ただ川に沿って歩くというのも悪くはないんじゃ?お金を使わない遊びの一つとして。
*かかしコンクール in 清澄白河 たまごの卵白を表現、でいいのでしょう。
私はモノにお金を使わない日、お金に頼らない遊びというのがこの世にもっともっとあって良いと思っています。それには消費者の楽しむということに対して意識の変化がないと簡単には普及しないと思うけれど、そんなちょっと変わった、新しい価値観がFactory 4Fや江東区を愛する若者達と作っていけたら良いな、と考えています。
小さいことだけれど動いていきますのでお楽しみに。
*工場と自然、相反するものでも共存していければ
*謎な実、江東区にはこの木がたくさんあるとか
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新年も日々の延長
明けましておめでとうございます。
年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか?Factory 4Fでは年末1、2階の工場はペンキ塗り、Factory 4F は必要ないモノを処分したりと片付け&大掃除でした。
私も机周りの紙類を処分しましたが、大掃除とは年末の行事の一つで掃除や片付けは毎日の行いなんだよね....とシンナー臭い中ボーッとしながら自分に言い聞かせていました。片付けや掃除は終わりのない仕事です。よし、もっと日々頑張ろう....とちょっと自分の情けなさを感じている中、とても嬉しいお知らせが届きました。
12月上旬に行ったsilhouette books主催のワークショップに対するお礼の手紙です。開けてみると可愛らしい文体で文字が書かれていました。差出人はワークショップに保育士の方が参加されていたのですがその方とその園児さん(5歳)からのお礼でした。そして先生からの素晴らしいレポート付!子供達がどのように制作をしていたのかが一目で分かる内容でした。このワークショップで学んだことを保育園で活かしてくださった保育士さんに心から感謝です。大変嬉しい!
この代表?に選ばれた子の作品を読むととても幸せな家庭に育っている様に私には見えました。
ベッドで笑顔で眠っている自分?ちゃんとスリッパもあって、お家にはクリスマスツリーもあって、部屋もデコレーションしてあるのか?なんてその子がどんな子か想像は広がりますが、もしかしたらこれはこの子の想像の世界かもしれない、とも感じます。『ワタシの思うクリスマスってこんな感じ!』と子供ながらに何か理想や感じることはあるでしょう。
時計の針は夜中12時、5歳からしてみたらこの時間は遥か彼方遠い時間と思っているのではないでしょうか。私は子供の頃そうでした。夜中12時は何か特別な時間と思ってました。それを過ぎたらどうなるんだろう?とか
きっと子供達はまた来年(もう今年)の12月クリスマスとかお正月が楽しみでしょう。
では大人は?
年末年始はちょっと苦手な方って多いのでは?私は特に社会人になってからいつも何か腑に落ちない感覚がありました。落ち着かないというか、楽しいんだけど妙にソワソワするあの感じ。どうしたらもっと穏やかに過ごせるだろう?と考えていました。まだ模索中ですが単純に年末も年始も自分の中であまり特別扱いしないというのがここ数年で出た答えです。
どうしても環境や周りの情報によって心がソワソワ、忙しい!あれもしなくちゃ!これできてない!となりがちですが、それは自分がまだ修行が足りず周囲に影響をされてしまう未熟者ということで。なのでまた来年勝負です。年に1度しか味わえないあの妙な雰囲気なのでなかなか実践が難しいですが、歳を重ねるごとにどんな環境にいても穏やかになれたらなぁと毎年.....思うのです。来年はもっと良い年末年始にしようと思うとある意味、成長する喜び、大人の楽しみはそこかな?と思います。
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ストーリーを作るワークショップ
今月の初め、silhouette books のワークショップが開かれました。
4Fでワークショップやイベントを開くようになって今では臨機応変に対応できたり予測ができるようになりましたが始めの頃は緊張をかくすことにもエネルギーを使っていたことを思い出します。
*レーザーで加工されたポップアップの中身
造本デザイナーの中村麻由美さんをはじめ、徐々に外部からワークショップを行ってくれる方々にも出会い、計画から実行まで4Fのスタッフとして携わるのですが、ワークショップは準備が大事だなとつくづく思います。
しかも時間や人数によっても内容も微妙に変化するのでどれくらい人が集まるか、ある程度見越してプランをいくつか予想しなければなりません。
今回のsilhouette booksのワークショップも企画段階から携わっていたのですが著者の一人であり篠原紙工の社員でもある新島さんが仕事の後残ってコツコツと準備を進めてくれたので4Fとしては当日のサポートのお仕事でした。
彼らはクールに材料に無駄もなく準備をしていてさすが慣れていました。
ワークショップだけを専門としているプロはどのように進めているのだろう.....?
Factory 4Fの仕事を通して一つの物を作るのにワークショップの段階でどこからどこまでをお客さんがやるか、というのも準備の大きなポイントであることに気がつきました。紙を切る段階からやるのか、紙は用意されていて折って切るだけなのか、貼るだけなのか。
限られた時間に物を完成させるとなるとどうしてもある程度の下準備は重要。ですが私はこの下準備こそがけっこう物を作る上では本当の勉強になるのではないかと思います。
例えば、紙を折る作業だとしてもその紙が水平直角に切れてないと折っても仕上がりが美しくないし紙の目のことを知ってないと糊をつけた時にゆがみが出てしまう。そういうことを知っているかどうかで仕上がりが全然違います。
しかしこのような考えはあくまでも自分で知識と技術を得て自分一人でも何かを作りたい.....!という人の考えであってワークショップはそんな難しいことを抜きにして楽しむこと、何か新しいことを知るきっかけであることが最も重要かと最終的には思います。こうるさいこと言わないで楽しむ、ですね。
今回のワークショップは影絵の仕掛けを作り、そしてポストカードにイラスト等を入れて物語を作るという工程がありました。
子供は自由に絵を描くのは何となく想像できるのですが大人だと考え込むかな?と予測したのですが思いのほか皆さん楽しんで描いていました。この日のお客さんはわりと創造力を使うことにあまり戸惑いがなかったのかも。
当たり前なのですが仕上がった作品は全て違い、いろんな人がいるんだなぁ、としみじみと感じました。
お客さんが各自物語を作った背景を解説している時に小学生の頃、国語の作文の時間や美術や図画工作でクラスメイトの作品を見たり読んだりすることが好きだったことを思い出しました。
ふと、なぜ好きだったんだろう?
と理由を考えたのですがおそらくクラスメイトの違う一面を知ることができる、からだったのかな?と思います。『あの子、こんなこと書くんだ、』『絵上手いのいいなぁ、意外と細かいんだ、』とか、今思うとずいぶんませた子供です。
それほど私にとって人というのは良し悪し含めてずっと興味のある対象です。
*どんなストーリーを書いたか説明
そしてありがたいことにFactory 4Fを通していろんな方とお会いすることができています。
*この日は可愛らしい子がたくさんいました
この日のお客さんで時間内に満足できる物が仕上がらなかったのか残ってイラストを仕上げているお客さんがいました。作ってハイ終わり、というのが普通かと思いますが、気にせずゆっくりと残っていられる空間や雰囲気?をFactory 4Fが提供できていたのなら嬉しいです。
*浮かび上がるシルエット
*SILHOUETTE BOOKSの梶原恵さんと新島龍彦さんの携わった作品達
詳しくはHP silhouette books
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新しい機械入りました!そしてその子との相性
篠原紙工ではミシン綴じという製本方法があります。Factory 4F、篠原紙工の4階にそのミシンはあり、綴じ作業が行われております。一応工業用ですが製本用というわけではなく洋服を縫う専用の機械です。
*販売している紙加工見本セット 4F BOX Factory 4F に入っているno.11の平ミシン綴じ ももちろん彼女が縫いました
担当しているのは佐藤さん。元アパレルにいた彼女なので紙より布に愛を感じるのは分かります。なのになぜ今は製本の業界へ....?お互いの人生経験の話をすると、『本当、なんでかねぇ~』と笑って話しているのですが、ある時こんなことを言っているのが印象的でした。『自分がパターンをひいた洋服を街の中で見るのが夢』だと。それは今のところまだ叶ってないけれど、それが『服』ではなくて『冊子』という点においては叶っている。これは彼女の話だけではない、夢の叶う形ってどう出るか分からないからおもしろい。
*今私と2人で製作中のワンピースのパターン、もちろん佐藤さん作
*パターンの製作中
*4階にある佐藤さんミシン
でもこのミシン綴じは佐藤さんとファッション業界の縁を繋げているのでしょうか?アパレル系の冊子でよく使われ、篠原紙工の中で人気なお仕事でもあります。数千部のミシン縫いをこの、東京の、大島の、篠原紙工の4階で彼女一人が縫っていて、それがこの日本の世に出回っていると思うとすごい。
ミシンの仕事が入ってくると彼女はフル稼働、なのですがあんまり忙しそうにしている様子は見えない。むしろ彼女よりミシンの音の方が忙しさを表しています。物によっては縫われる音が微妙に違い、そして彼女が糸切りばさみを机に置く音がある程度一定なのが面白い。その音が一日中テンポ良く響くのです。ということは、やっぱり機械と機械を操る人というのはある程度一心同体になっているのでしょう。
*糸切りハサミとちゃんと糸くずを入れるゴミ箱がある
なんて私はのんきにパソコンを打ちながら思います。おそらく、ミシンだけでなく篠原紙工の工場で働く人全員が何かしらそういう感覚はあると思います。私が1階と2階でパソコン仕事をしたらそういう所ももっと見えるかもしれない。しかし、残念ながらあの大きな機械音の中で私の精神状態はもちそうにないけれど。
オシャレな冊子に人気なミシン綴じ、他にも案件が増えてきて佐藤さん一人でやるには限界もあり、篠原社長が動きました。いつもお世話になっている機械屋さんにミシンの機械をオーダーメイド。しかも中古のミシン?とか何やらいろんな物を合体させ作ったとか。かなり時間もかかって、社長も佐藤さんもあーだ、こーだ、と機械屋さんと相談していました。
*この人(機械)です
まるで新型ロボットを作っている親のようにも見えました。そして最近やっと!我が子(機械)が篠原紙工へ。それも2階の工場に。あんまり興奮する様子もない佐藤さんに新しい子が入ってきた気持ちを聞くと、あんまりこのこの子(機械)の扱いがピンと来ないと。その時に彼女の口から出てきた言葉が
『この子と相性があうか、心配だわ~』
何を?言う?と思われる方もいるかな?
*エスプレッソマシーン、全然コーヒーに詳しくないのにこれを使うのが楽しくて長年付き合ってます
私も日々、些細な日用品を選ぶ時でもそういうことを頻繁に思うのでこの言葉がすごく心に響きます。どんな小さい物でも使い心地が良かったり、自分の感覚や手に合ったり、相性はあると思うのでそれが仕事の機械ともなれば仲良くならないと篠原紙工では仕事になりません。馴染みがないものを使う不安さからそういう言葉が出て来るのかもしれませんが佐藤さんには頑張って慣れて自分のものにしてもらうしかありません!
何度も書きますが工場にいるととにかく物に囲まれています、しかも大型の物。そしてそこから流れてくる大量生産の出来上がる物達。エネルギー満載の空間なのです。なのでその物そのものが持つ力や価値を発揮させないと単なる大きな物質。悲しい存在にならないためにも操るオペレーターさんには機械と仲良くなって可愛がってほしいです。
*NEWミシン、人が流すだけで自動的に縫ってくれるとか
自分が手がけたものを街の中で見るのが夢、この新しい機械を導入すれば大量生産を効率よくできて出会うチャンスも増えるかも?でも、ミシンは手先も足も使う機械だし、もしかしたら自分の技術力を使った感じはちょっと消えるかもしれませんね。
いつか紙じゃなくて彼女が手がけた洋服が街の中で見れる夢が叶うといいなぁ。篠原紙工で洋裁の相談受け付けましょうか、街でも着れるカッコいい工場作業着とか。
新しい機械が佐藤さんと仲良く稼働する日が来るのを楽しみにしております。
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