職人とアーティストの共同作業

東京ステーションギャラリーで行われている『パリ、リトグラフ工房 idem から-現代アーティスト20人の叫びと囁き』というタイトルの展示に行ってきました。

 

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*リトグラフとは平らな石の上に描画し、印刷する版画のこと。

 

メトロのフリーペーパーの中でこの写真広告を見つけた時に印刷工場の雰囲気がプンプンしたのでFactory 4Fに共通する何かが得られるかも、という思いで行ってきました。内容を調べると、パリに『idem』というリトグラフ工房があり、(Introduction : Idem Paris)そこではいろんな作家さんが出入りして職人さんと作品制作をしているようです。HPを見ると天窓から太陽光が降り注ぎ、緑もあってすごく素敵な空間です。

 

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*HPより Introduction : Idem Paris

 

展示の館内は撮影禁止なので写真で紹介できないのが残念ですがリトグラフは独特なかすれの風合いがある印刷方法という感じがしました。展示では20名の作家がidemで制作した作品が展示されています。日本人だと やなぎみわ森山大道 の作品もありました。

 この日は学芸員による解説があったので参加したのですが、一人で見る美術鑑賞と違い作家の背景等も聞けるので作品の鑑賞度がぐっと強まりました。学芸員さんと一緒に回って見たのはたぶん、、、初めて。

 

このidemという工房の中にはプリント職人さんがいて常連のアーティストの中には自分の表現にピタリと合うようにプリントを出してくれる職人さんと毎回コンビを組んで制作する方もいるそうです。映画監督のデヴィット・リンチや写真家のJRも工房に出入りする一人で、彼らによるによるidemの紹介映像では工房内でどのように1枚のプリントが職人によって出されるかが美しいドキュメントのように流れていました。

 

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*私の中では『ツインピークス』のイメージですが、デヴィットリンチ(左)、 写真家 JR (右)

 

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*けっこうきわどいことをする写真家のJRですが私はどこか彼の作品に魅かれます

 

ある作家は日本の和紙を使って作品制作をしていました。その和紙はものすごく薄く、機械のローラーでくっついてしまう可能性があるところをidemの職人が何とか工夫してプリントさせよう、というストーリーを学芸員さんから聞きました。そしてなんと、和紙を作った和紙職人も日本からパリに駆けつけて薄い和紙の上にどのようにプリントされるのかを立ち会いしたそうです。本当に物事にこだわれば最後の最後まで自分の目で見たいものです。それこそ職人精神だと思います。

 展示を見ながらアーティストと職人の二人三脚、ということを考えました。

 

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*idemの工房 

 コンセプト、制作、展示、プレゼン、と全てを自分でやらなくてはアーティストと言えない、と教育されてきた感じが....私はするのですが。このidemやFactory 4F のある篠原紙工で働いているとある部分はプロに任せても良いのかもしれないと思うようになりました。

なぜなら、面白いアイデアによって高い技術を持っている職人は力を発揮できるわけで、アーティストの中途半端な技術で美しくない物を見るよりかは完成度の高い美しいものを見たいという心が人にはあるからです。

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 篠原紙工、制作担当の社員にも『こういう風に作って欲しい、とかアイデアやデザインを言われないとできないなぁ...』と言う人もいます。もちろん、いろんな捉え方はありますがアート作品だとしても分散して一つのものを作るというやり方があってもいいのだ、と仕事を通して思えるようになりました。心が楽に広くなった感じです。

 

そんなことを考えていたら、ある美術系の学生さんが卒業制作を篠原紙工に依頼してきました。多くのスタッフは心のどこかで『えっ、自分で作るのが卒業制作の意義では?』と思ったようです。もちろん私にもその考えは頭に浮かんできました。しかし今では形を作るこよりも目には見えないけれどアイデアや思いつきの方により価値を置くようになり、そのアイデアを美しい形で見てみたいから是非、弊社で作る方向にならないかな、なんて思っていました。

 

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 *弊社の社員が学生の作品を制作図にしたもの

 

もちろん実案になり、スペシャルバージョン...として手加工チームの一人がコツコツと作っていました。

 

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 *『こういうのを作りたい...』学生が持ち込んだ制作サンプル

 

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*これはこれで味のある作品です 

 

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*こんな形になりました。写真があまりよくなくて申し訳ない....。

 

このパリのidemでは創作意欲が湧きそうな空間ですがFactory 4Fにも少しは似たような空気感があるのではないか?と想像します。社員にもこの展示の紹介をしてみたところ、早速行ってくれたようでお互い『パリに行ったら見学してみたいね、』なんて話をしていました。

 

さて、展示会場から出る際に、どこかで見たことがあるチラシが.....次回の展示は画家のジョルジョ・モランディー展。このチラシのデザインはFactory 4Fとも関わりが深い、というかスタッフとして関わっている ALL RIGHT さんALL RIGHT GRAPHICS です。ここ東京ステーションギャラリーだとは知らず、これも何か不思議な縁?

 

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この展示も是非行ってみたいです。

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東京駅は美しいです。

 

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この紹介した展示は2月7日まで、もし興味のある方は行ってみてください。

Factory4F タブチ http://factory4f.com/

 

www.ejrcf.or.jp