印刷のいろはフェスタ2016

土曜日の朝、おはようございます! 4F編集室の沼上です。

けさは大田区鵜の木できのう・きょうと開催中の印刷フェス「印刷のいろはフェスタ2016」をご紹介◎

 

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会場は、東急多摩川線鵜の木駅から線路沿いに歩いて3分ほどのところにある印刷会社の金羊社さん。

マスコットキャラクターの顔くんがお出迎えしてくれます。

 

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会場に入るとまっさきにあるのが、「いろはマーケット」。

お菓子にコーヒー、いろいろなクリエイターの個性的なグッズなどがずらり。

 

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Factory 4Fもブース出展しています!

出来たてほやほやの4Fes! 2016のチラシも絶賛配布中♪

(ぜひ遊びにお越しください◎)

 

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4Fブースでは4F BOXも販売してます。

ブースがお隣になったイラストレーターの中山信一さん(中小企業というユニットで音楽活動も!)に、顔くんのイラストをトースターポップに書いていただきました◎

飛び出す顔くんと中山さん。

 

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こちらが会場案内。

工場ツアーやいろいろな体験イベントが用意されています。

(工場内はあいにくの撮影禁止なので、ぜひご自身の目でご覧ください!)

 

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今年の目玉は、この「印刷工場体験ツアー」!

紙製のCDジャケットをつくる体験型アトラクションです。

 

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断裁機や印刷機の大型模型をくぐったり通り抜けたりしながら、印刷物の気持ちになって(?)断裁→印刷→加工の工程を体感し、学んで、紙ジャケを作っていきます。

 

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活版印刷や。

 

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スクリーン印刷や。

(ここで使っているインキは、蓄光インキという光を吸収して暗闇で光るインキです)

 

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箔押しや。

いろいろな印刷・加工を体験できます。

 

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各工程をまわって印刷したものを自分の手で組み立てて……

 

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こんな紙ジャケットが出来上がりました!

 

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こちらの「蛍光わーるど」もおすすめ。

ブラックライトで妖しく光る蛍光素材の世界をたのしめます。

 

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蛍光インキはもちろん、果物の断面も光っちゃいます。

 

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いろはフェスタのチラシも蛍光インキが使われた部分がぼわっと光ってちがった表情がたのしめます。

4Fes! 2016のチラシも蛍光系のインキが使われているので、ぜひブラックライトの下での変化をお楽しみください!

 

このほかにも、モリサワさんの協力による「フォント作成体験」や大型の活版印刷機(プラテン)の印刷実演、世界の絵本が楽しめる「ワールドライブラリー」など、印刷の面白さを体験できるイベントが盛りだくさん◎

お友達や仕事仲間と一緒でも、お子さんのいるファミリーでも、もちろんお一人でも、きっとたのしめるイベントです。

ぜひ遊びにお出かけください。本日17時までです!

 

www.irohaten.com

紙箱の宇宙は広かった! 〜 紙器研究所「箱覧会2016」

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こんにちは。4Fブログをご覧の皆さま、はじめまして。

4Fの編集室長をしている沼上純也(ぬまかみ・じゅんや)と申します。

(実は、Factory 4Fには「4F編集室」という制作チームがあるのです!)

Factory 4Fももうすぐ2周年ということで、この4Fブログにもこれまでとは違った風を吹き入れるべく、これからちょこちょこ記事を書いていきたいと思います。

お見知り置きのほど、お願いいたします!

(マネージャー・タブチも引き続き執筆しますので、タブチファンの皆さんもご安心を!)

さて、1回目の記事から4Fと直接関わりのないことでアレなんですが、今回ご紹介するのは3331 Arts Chiyodaで本日まで(!)開催中の「箱覧会2016」。

shikiken.jp

かみの工作所テラダモケイなどでも有名な “紙加工界の雄”・福永紙工さんが1年前に立ち上げたプロジェクト「紙器研究所」の第1回発表会です。

オフィシャルサイトによると、紙器研究所はこんなプロジェクトとのこと。

「紙器研究所」は紙を使った器を研究し、社会に貢献することを目指す活動。紙の加工と印刷を手がける工場を軸に、紙を立体化することに執着するデザイナーが集まり、紙器を様々な側面から継続的に研究しています。 分類、展開図、構造、組立方法などから、紙器の可能性を可視化し、設計や製造方法を追求しています。

会場につくと、こんな感じでポスターと(箱の)抜き型が出迎えてくれます。

「箱の宇宙を覗く4日間」というサブタイトルに期待も膨らみます。

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会場内はというと、まさしく箱の宇宙!

紙の「箱」についての基本的な作り方の説明にはじまり、箱の形状についての考察(これをマッピングした図がまた興味深いです)、さまざまな箱の可能性を探ったプロトタイプの展示がずらりと並びます。

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なかでも気になったのは、さまざまな箱のバリエーションのプロトタイプ。

基本となる箱(いわゆるフツーのフタのできる箱です)に、切り込みや折りスジなどを足し引きすることで、まったく印象が異なる箱が組み上がってしまうのです。

たとえばこんな感じで、遠目にはまったく同じ展開図に見えます(近づくと切れ込みやスジが見えます)。

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こんな箱のバリエーションが、展開図と組み上がりをセットにして50例も展示されています。

しかも、基本的な紙箱をつくる機械で加工が可能(専門的に書くと、「基本的なグルアー設備で胴貼りが可能」)で、なおかつ中にモノが入りフタが開閉できるという制約のもとで、これだけのバリエーションが出来上がっているとのこと。

ほかには「三角形を基本構成要素とした箱の設計」と題した研究のプロトタイプ展示も。

そんなさまざまな紙箱のプロトタイプの一部は、こんなふうに実際に触れるようにもなっています。

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「おさわりOK」なのは、中央のテーブルに並んだ紙箱たち。

来場者の皆さんも、これはどうなっているんだろう? と気になる箱を手にとっては、へー! と驚いたり、ふむふむとうなずいたりしていました。

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また、会場内には試行錯誤の過程がかいま見られるコーナーもありました。

出来上がったプロトタイプの面白さもさることながら、これを生み出した研究員の皆さんの探究心と、この研究を可能にした福永紙工代表の山田明良さん(紙器研究所の代表でもあります)のふところの大きさに頭が下がります。

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会場を出ようとしたところ、代表の山田さんがいらしたので、少しだけお話をすることができました。

山田さん「かみの工作所やテラダモケイなどの活動が目立っていますが、工場では普通の紙の箱をつくったりしているんです。今回はその中間くらいをやりたくて、こういう活動を始めました。」

先細りと言われる紙業界にあって、自分たちの足元をしっかりと見つめながら、新しい可能性に挑戦していく経営者としての言葉が印象的でした。

ちなみに、本日も17時から研究員のお一人・三星安澄さん(グラフィックデザイナー)による無料レクチャーがおこなわれるそう。

お時間ある方はぜひお出かけください。

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◎文責:沼上純也(4F編集室)

静寂すぎる静物画家、ジョルジョ•モランディ

今年の1月、東京ステーションギャラリーにある展示を見に行った様子をブログに上げました。そして次回の展示はイタリアの画家 ジョルジョ•モランディであることを告知してからすっかり時が過ぎてしまいました。この展示の宣伝美術はALL RIGHTの髙田唯さん、そして封筒の制作を弊社でも携わらせていただきました。

 ●前回のブログ 職人とアーティストの共同作業 - 4F Blog

 ジョルジョ•モランディがイタリアの有名な画家であることは全く知らなかったのですがフライヤーの様子から色合いや柔らかい線に心魅かれていました。そして髙田唯さんがある時SNSでモランディに対する思いを綴っていて、何故だかその投稿がずーっと心に残っていました。モランディと髙田さんのデザインとがわたしの中で何か繋がったのでしょうか。展示終了間近なので先日、急いで見に行ってきました。

 

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 *髙田唯さんディレクションの招待状、活版も使われています。質感が優しい紙が使われていました

 

ジョルジョ•モランディはイタリア出身。私のイタリアのイメージは北と南では土地はもちろん人柄もかなり違う印象です。南はよく言われるように陽気で大らか、北はどちらかというと落ち着きのある雰囲気、モランディは案の定、ボローニャ出身ということもあって北の方ですね。作風から想像できます。

 

展示会場に入ると彼のポートレイト写真がありました。想像していたより細めで素敵な紳士に見えましたが、神経質そう.....にも見えました。その直感はまんざら外れてはなさそうです。

 

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至る所にどれも似たような静物画がずらり。まるで間違い探しをさせられているようです。花瓶、壷、水差し、ボウル、箱、等の日用品がモチーフ、位置を変えたり、ちょっと色が違う、だけのように見える。この人は一体どうしたのだ?

会場の壁には彼のコンセプトに繋がる言葉が綴られていました。私にとってその言葉が作品を読み解く手助けとなりました。その言葉と静物画から私は徐々に彼の表現することに近づけた気がしました。

とてもシンプルで短くまとめられた言葉ですが考えれば考えるほど思索にふけるものばかりです。

「目に見えるものは、描けるのです」

「重要なのは、ものの深奥に、本質にふれることです」

「実際に見ているもの以上に、抽象的で非現実的なものはない」

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この世の本質を見抜いているかのような言葉です。私たちの目の前に起こる現象というのはあくまでも現象であってその一歩奥の見えないところに本当の答えやヒントが隠されているというのは私自身が年齢を重ねる程に感じることです。モランディはそのこの世の本質とは何か?ということを探るために静物画をストイックに描き続けていたのかもしれません。

 

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 *上の絵と同じではないですよ

 

展示の解説にモランディの絵画は「時がとまった静寂さ、見る人を瞑想的な世界へ連れていく」とありました。確かに彼の絵は見れば見るほど自分と対話をさせられているような気持ちになり、埃がつもる音すら聞こえてきそうな静寂さがあります。モランディ自身も日々の自分の微妙な精神的変化をこの静物画で表現していたのでは、と私は感じます。

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 *ただそこに存在している

展示場には彼のアトリエの様子が見れる写真や映像がありました。数多くのモチーフがアトリエに陳列されていて埃だらけのものもありました。しかしその様子から単なる所有欲で物を持っているのではなくモランディと物とが一体化しているような佇まいでした。映像の中で印象に残った彼の言葉は、「私は一度使った物は大切にするけど、思い切って捨てないと物の隷縦になってしまうからね、日本では使い終わった物は埋葬するんだってね、」と。

 

私は学生時代に茶道をかじったのですが、ある生徒が不注意からお茶碗を割ってしまいした。やってはいけないことをしてしまったという思いで泣きじゃくる彼女に茶道の先生はまず割ってしまった事実を受け入れさせ、不注意に至ってしまった自分と対話し、感謝しながらお茶碗を土にかえすよう私たちを導いてくれました。この経験は私の中に今でも強く残っています。モランディだったらこの話をどう思うでしょうか?

 

いまでこそ、本当に大事な物だけで、ムダな物を持たない事や手放すことが流行っていますが物事の本質的なことを見抜く人達というのは時代に関係なくいたのです。彼らからいわせれば「流行」ということが分からないかもしれませんね。

 

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この展示に行った他の社員は一言「変態ですよね。」確かに100点近くある絵画、どれもこれも似たような物ばかり、奇妙な空間、一言「変態」でいいのかも。でもみんな、何かの変態だと私は思います。

 

終了間近のお知らせで申し訳ないのですが、今週末にでもぜひ。

www.ejrcf.or.jp

 

Factory4F タブチ http://factory4f.com/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファクトリーツアーで紙ではなく、日本のお話

ここ最近のファクトリーツアーでのお話。3月はわりと毎週お客様がみえました。ある日は日本在住のフランス人の方々が来てくださいました。観光客向けのサイトからFactory 4FにたどりついたということでしたがFactory 4F単独の英語サイトもない中ではここを見つけるのは難しいはずです。

 さて、どんなファクトリーツアーになるか?と考えましたが、自分が逆の立場であったらどうだろう?海外にいたとして、現地の町工場に見学に行ったら...やはり普段通りの様子が見たいと思う。なのでそのままいつもの感じであとは臨機応変にしようと決めました。

 

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この日はその他に2名、デザイナーの方々も含め計4名でした。フランス人のお客さんは日本語が少し話せたので言語の問題はなくコミュニケーションが出来ました。この日はみなさん、デザインや紙、本が好き、という共通点がありました。やはり、Factory 4Fに来る方のほとんどは紙、本好きですね。

 

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見学最中、デザイナーの方々はとても勉強熱心で印刷から加工にあたって知らないことが多いのでクライアントにもっと楽しい提案をできるようになりたい、という心から現場の人にいろんな質問をしていました、もう一人のお客様はデザイン業務の中で今まで「この加工はどいうこと???」と思うことが分かったと。お二人とも仕事の自信につながるような機会になったようで、こちらもお役に立てて幸いです。

 

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*断裁クイズ

 

見学が終わって一息していると話題は「東京」の話になりました。フランス人の彼らはパリ出身。ヨーロッパの多くの都市はそうだと思いますが建物の多くは古く、新しい外観の建物を取り入れるのはすごく大変。それに比べ、東京はいろんな建物がごちゃごちゃで面白い、という意見が彼らから出ました。

 

私もそんなことを思ったことがあります。東京の中心地を歩いていると洋服屋さんやオシャレなcafe、謎の居酒屋、そしてとたんに神社。目がチカチカしそうな看板があると思えば、洗練されたビル。という具合に。場所によって人々のファッションもどことなく違う気がする。京都や奈良などの古都も良いけれど東京のようにいろんなもののミックス都市は外国人の目にどのように見えるのだろう。

 

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*お好きな紙、持ち帰りコーナー

 

外国人観光客がここ数年急増しているニュースはよく耳にしますが、今までそんなに観光客は少なかったのか!そんな単純が疑問が浮かびます。観光客が増えることがニュースになるのですね。

 もしかしたら政府がオリンピックに向けて庶民に『こんなに外国人が増えているんだから外国人にも慣れて英語も頑張らないとダメだぞ!』という焦りを促していたり?移民や人材のことも含めて少しずつ、少しずつ、日本人以外の国籍の人達との交流を活発にさせたいのかな?なんて考えたりします。

 しかしながら、日本という国に魅力を感じてくれる人が世界中から人が集まってもらえればこんなに嬉しいことはないです。大陸から離れた小さな島国が経済的発展を成し遂げ、歴史も四季もあって自然が豊か。そしてかなり独特なカルチャーもある。面白くも奇妙でもある国だなぁ...と自分の国を考えます。完璧に外国人になった気持ちで日本を見てみたいです。想像はできるけれど私はやはり日本人です。見えないおもしろい点は数多くあることでしょう。

 これから観光業で日本がのびたら私たち国民にも何か良い影響はあるでしょう。その中で...東京の製本会社の工場見学が観光の一つになったらおもしろいですね。

 Factory4F タブチ http://factory4f.com/

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*毎週水曜のファクトリーツアー

factory4ftour.connpass.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鳩サブレーに心をつつかれました

前に神奈川県の印刷組合の方々が工場見学に見えた時のこと、手みやげにお菓子を持ってきてくださいました。

 それは、鎌倉名物の鳩サブレー

私も好きです。ヨーロッパと日本のちょうど中間くらいのあっさり味のビスケット、いえ、サブレーが。

 

 篠原紙工の社員数を気遣いしてくださったのかとても大きな袋。その大きな紙袋には鳩のイラストだけで、文字はなくそのシンプルさに目が留まりました。

「こんなに大きな鳩サブレー缶を頂いたのは初めてかも…」と思いながら、中身を開けると...次々と!私の心に響くものがありました。

 

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缶の質感はマットでレモン色に近い、そして缶のサイドには鳩のシール、そして開けると鳩サブレーたちがたくさん!たたずんでいます。

 

 

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 たくさん入っているので工場1F、2F、4Fと数を気にすることなく配れる!みんな喜ぶだろうな、と思いながら缶の奥まで鳩を捕まえると…

 

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ちょうど半分のしきり紙に何やらしかけが、指で引っ掛ける部分がきちんとあり、丸く描かれた部分には何やら点線があります。よく見るとその丸部分を抜くとコースターになる紙加工が施されていました!

 

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*メンコ遊びなどに...とも記されています! 遊び心がある!

 

手に取った人を飽きさせないというか、作り手のちょっとした遊び心と細かい所にまで鳩サブレーの世界が表現されていて思わず一人こころの中で興奮してしまいした。

缶に貼ってあるシールはお客さんが引き取りやすいように粘着が着いていない部分もあります。きれいに剥がしやすいタイプの、シールというよりステッカーのようです。

 

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…もしかしたら『きれいに剥がしてノートやファイルなどに貼って楽しんでくださいね、』という制作者の思いかな…? なんて勝手に想像してしまいました。

 

ところが気づく所はそれだけではありませんでした。鳩サブレーちゃんたちがたたずんでいるプラスチックのしきりケースを捨てようとした時にふと気づきました。底にも周りにも鳩の模様があります。

 

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*ケース底にも鳩

 

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 *鳩、鳩、鳩!

 もう私の心は制作者の願うツボなのではないでしょうか。

 手にした時から鳩サブレーの世界に引き込まれ、可愛らしいお菓子を食べて幸せになり、頭から食べるか、尾から食べるか、で悩まされ、捨てる時には色々な発見を与えてくれる。いろんなことを感じさせてくれるお菓子だと思いました。

捨ててしまう所にも手を抜かずきちんと鳩の気持ち(?)を描き、しきりの紙は他の用途へ、と遊び心を込めて。シールにも何となくステッカーの思惑があるように思えてなりません。隅々にまで想いが入っててある意味無駄がない。

 

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*つぶやき、という言葉を使うのも現代と掛け合わせているのでしょうか、内容はたっぷり歴史と想いがつまってました

 

そしてしまいには鳩サブレーが出来た背景のお話の冊子です。鳩サブレーは有名ですがそれがどのような形で誕生したのかは知りませんでした。 いえ、こればかりでなく、この世には老舗と言われ数多くの良いものは出ているのにそれを私が知らなさすぎなのだと思いました。

 

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*撮影後、片付けていたら裏にも鳩がいること発見

 鳩サブレー。明治時代、初代がある外国人からもらったビスケットが大変気に入り、子供達へ人気のお菓子として作る決意をしたところから始まります。

 研究を重ねるうちにバターなどの味に馴染みがまだない時代でしたが、このピスケ(ビスケット)にはバターの割合がポイントだと気づき、初代が納得いくまで毎日試作に明けくれました。人真似が嫌いな性格で何とか今までに無いお菓子を作ろうという熱意が初代を突き動かしていたようです。

 

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*包み紙はちょっと渋め。もしあの丸い鳩の紙だったらちょっとポップすぎますよね、きっと。

 

 しかし明治時代、人々にとってバターの味はまだ受け入れがたく、ご近所の方に「美味しかったよォ」と言われましたが、ある日初代の奥さんがご近所を伺った時に裏庭で鳩サブレーが犬の餌になっていたのを見たそうです。

全てを捧げている初代の気持ちを思うと奥さんは何も言えず、数年間は内緒にしていたとのことです。初代は「名物にうまいものあり豊島屋の菓子!」と常に口に出し、味の追求には大変厳しかったと。

お話はそこそこ長いのですが、鳩サブレーの歴史と何よりも明治の人の気骨の精神が歴史の教科書よりも伝わる内容でした。

 

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 *鳩になった初代

 良いものを作る、売る、そして何より継承していくことの難しさを感じました。この冊子には初代の一本筋が通った強い美学、職人気質があり、しかし凝り固まらず、その時代の流れにそって勉強し新しいことを受け入れる好奇心がある方だったことが垣間見えました。

 

今はどんな会社でどんな人達が動かしているのだろう?想像してしまいます。

自分の会社のことを悪く伝える冊子なんて、もちろんあるわけないですし、老舗が絶対的に良い会社とも言い切れない、と私は考えますが、少なくともこの『豊島屋の鳩サブレー』を手に取ってブログを書くまで動かされたことは確かです。抽象的ですが、何かが伝わったから、でしょう。今度は私が誰かに鳩サブレーをプレゼントしようかな...。

 鳩の思うつぼの客です。

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 *美味しく頂きました。神奈川印刷組合の方々、ありがとうございました!

 Factory4F タブチ http://factory4f.com/

 

 

 

 

 

 

CDアルバム「モメント e.p.」clammbonさんとの共同制作

昨年のことですが、いつもお世話になっている箔押しで有名なコスモテックさんのFacebookである方が写っている投稿写真が目に留まりました。「…ん?コスモの青木さんとそのとなりはクラムボン?」

【 解禁 】 クラムボン 原田郁子さん ご来社! そのワケは!? : ようこそ!行列のできる『箔押し印刷工房』へ

 そうです。ミュージシャンであるクラムボン原田郁子さん。

 箔押し?もしや自分でCDジャケット制作をしている?細部にまで自分たちのセンスをきちんと表現するアーティストだとは思っていましたが、工場の現場に来るってすごいなぁ…。なんて思ったのを今でも覚えています。

この調子で篠原紙工にも何か縁があるではないか?そしたら本当に縁が巡って来てクラムボンさんとお仕事をさせていただくことになりました。

 

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* 初期段階の打ち合わせ、はじめはデザインがちょっと違いました

 クラムボンはメジャーレーベルから独立し、自分たちのトロピカルというレーベルからアルバム第一弾としてCDを発表するという、そのCDジャケット制作を光栄にも篠原紙工がやることになったのです。しかもそのCDはライブ会場で手渡し販売!オーディエンスに対してとてもあたたかい心が感じられます。

 最初にクラムボンの原田さんとマネージャーの松見さんが篠原紙工に打ち合わせに来た時、とても自然な雰囲気の方々というのが第一印象でした。私にとってはデビュー当時の個性的で強い印象でとまっていた原田さんでしたが、リラックスした感じのすごく素敵な女性でした。

 

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* 原田さんのドローイング。線と鉛筆の柔らかさとがピタリとはまる絵です

 

クラムボンというアーティストは私が20代前半の頃、原田さんのルックスや声も含めて音楽好きの女の子にはもちろん、バンドマンの男の子にも人気で爽やかなバンドというイメージが私の中にありました。しかしその後、原田さんが他のミュージシャンと共同制作で活躍を広げている様子や雑誌やメディアでの表現や言葉を見聞きするたびに、ふんわりした感じとは違う強い芯があるアーティスト、という印象に私の中で変わっていました。

 

 そして今ではCDジャケット制作の打ち合わせにご本人が工場へ来るくらいですからきっとそこに至るまでにいろんなことがあったに違いない、と勝手ながら思いました。私はクラムボンさんが自分たちの選択でインディペンデントに踏み切ったその心意気にとても興味が湧きました。

 

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* CDジャケットに「clammbon」と箔押しされたタグをミシンで縫い合わせる仕様。そのタグ色えらび 

 Factory 4Fのポジションから見ていると製本業界は印刷会社さんからの下請けという図式で業界全体がその流れをずっと黙って引き継いでいるというのをしばしば感じます。

 しかしその図式だけでは先は暗く、変化を待っていないで自分たちの価値は自分たちで発信していかなければ新しい世界は開けないという時代がきており、Factory 4Fはその一つの実験の場として存在しています。

  

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* 試作品の製作風景、手作業です

 ミュージシャンはメジャーという枠では音楽に集中できるという良い面もあるのかもしれませんが自分たちが大切にしたいこと、表現をよりダイレクトにオーディエンスに伝えたいと思うのであれば枠から抜け出して自分たちで活動を広げた方が新しい世界につながる、それはもしかしたら私たち製本業界と同じことなのかもしれません。

 

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*タグに箔押し!そして抜きはいつもお世話になっている東北紙業社さんにお願いしました

 

 世界は全く違えども、クラムボンさんとはそういうエネルギーの方向性が同じだからこのような縁が巡ってきたのではないかと思っています。

 

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*ゆっくりと小さな声で会話する原田さんのトーンが心地よい打ち合わせでした

 

ミュージシャンと紙加工屋が一緒になってCDジャケットを制作する、あまり聞いたことがありませんがこれからはこのような動き方がどの業界でも増えるのではないかな、、、なんて想像します。

 作り手のアイデアや心を制作現場の人間が直接聞いて形にする。考えればシンプルなことなのにどうして今まではそれができなかったのだろう?もちろんそこには仕事上の事情もあるでしょうが、したくてもなかなかできる環境でなかったといえるでしょうか。

 

 

 

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*タグをミシンで縫い合わせています

 よくいわれるように今はテクノロジーのおかげで個人レベルでの発信がしやすくなった結果、良くも悪くも「もっと正直に思いや考えを表現していいのかも...」と感じる人達(会社)が増えてきています。

その良い面を考慮すると自然なかたちで自分たちが良いと思うことを素直にやるのは素晴らしいことで、発信する必要もあると思います。

しかしその半面、個人も会社も自分の格となる美学、哲学を常日頃考え、それを常に見直して更新していく力が必要なのでは?と考えます。

 

篠原紙工、Factory 4Fもまさにまだまだ発展途上。ただ発信する手軽さに甘えるのではなく足元を見て中身のある発信ができる会社を目指したいです。

  

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*工場内での量産風景!

 今回は クラムボン さんという世に知られた方の例を取り上げてブログにも書かせていただきましたが、このようにいつもお客さんの声が現場に届きやすい、聞きやすい仕事ばかりではありません。先ほども書きましたが、新しい価値やユニークな技術を表向きに出していくことも大事ですが、同時に製本会社の基本として大事なこと。紙媒体で情報を安心してお客さんに届ける信頼性、情報をより伝わりやすくするための紙加工であることを忘れずに日々の仕事で精進です。

 

自分の日常で例えると…たまにある大きな喜び、その時は多いにその喜びを噛み締めていいけれどそこにいつまでも留まらず基本に戻って日々のもっと小さな喜びや成功を積み重ねる楽しさにより価値を置く、という感じかな。

 

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 *篠原紙工のミシン担当:佐藤 絵弥さん、量産を一人で乗りきりました!

 さておき、

このCDジャケット制作の経験が原田さんにとって紙の魅力、製本世界での表現の楽しさを感じるきっかけとなってくれていたらとても嬉しいです。そして原田さんの次の創作活動の何かに繋がってくれればもっと嬉しい。

  クラムボンの原田さん、マネージャーの松見さん、ご紹介いただいたコスモテックの青木さん、東北紙業社の加藤さん、その他ご協力いただいた方々、ありがとうございました!

 

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 Factory4F タブチ http://factory4f.com/

 

 

 

 

 

 

組織での意識変化

ここ最近のFactory 4F、篠原紙工の社員はインフルエンザの病に襲われとても静かだったようです。私もその一人で、症状は軽かったのですが非常に体がだるく、しばらく静かに過ごしておりました。おかげであっという間に前回のブログから時間が空いてしまいました。みなさまはお元気でお過ごしでしょうか?

 

今日はここ最近のファクトリーツアーの様子とお客様との会話の中で現場で働く社員の意識という話題が出たのでそこのとを少しだけお話ししたいと思います。

 

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*この日は神奈川県の印刷組合の方々。20名も!来てくださいました。

 

1月の後半からFactory 4Fへのお客さんの出入りも賑わいはじめました。近所のかわいいお客様、小学生の社会科見学としてのファクトリーツアーの申仕込みもあり、水曜以外にも特別開催したりしてにぎやかな日々が続きました。3年生だったのですが今回の生徒さんは大人しく、お行儀がいい子ばかりでびっくりです。小学生の質問はシンプルでいつも考えるネタをくれます。『どうしてこの仕事に就いたのですか??』とかね。

 

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*3年生のかわいらしい生徒さん、センスのある質問や答えに私が学ばさせてもらいました。

 

そして、ある日のファクトリーツアーは偶然にも2組様とも関西からのお客様でした。一組は兵庫で印刷加工業の経営をされている方、そしてもう一組は大阪のレトロ印刷さん、篠原紙工でも携わってお仕事をしたことがある会社さんです。レトロ印刷さんの女性2人は工場内の様子や機械に反応がとても良く案内する側も気持ち良くできました。ところが、兵庫からのお客様の反応はというと工場に見慣れている、という感じです。

 

印刷会社経営者となると工場も持っていてその中に製本部門もあったりすると確かに工場へ来てもそんなに大喜びするわけではないですね。どんな事が知りたいのかを探る為にもお客さんとの共通点を見つけ会話を進めていくと経営のことに興味を示してくださいました。

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*どうやってマジック折りが折られるのか解説中

 

お金の動きや仕事の調整の話となると私はできないので、そしたら代表の篠原と話す時間を作った方が良いかな...と頭の中では万が一のプランも考えていたのですが、嬉しい事にFactory 4Fがどのように立ち上がったのか、またどのように現場の人がファクトリーツアーの際に自分で説明するようになったのか、というような内容の質問を受けました。私で答えられる内容の質問だったので安心したのと同時にとても素直に質問をぶつけてくださる方だなぁ、と嬉しく思いました。

 

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現場で機械を動かしてる人が直接説明してくれることに感動、人前で説明する事に慣れているとおっしゃってくださいました。どのように社員をそういう方向へ持っていったのか、Factoty 4F立ち上げの時に他の現場の社員からの理解は元々あったのか、協力的だったのか等々。

 そういうことを聞いてくれてありがとうございます、と思ってしましました。正直なところ普段現場で黙々と機械を動かしている社員にどのように会社の新しい流れについてきてもらうか、というのは大きな課題でした。理解するスタート地点にも立ってないと感じることも多々ありました。具体的にどうやってという答えは無いのですが、ただただ少しずつコミュニケーションを重ねての今です。

 

ここで偉そうに書かせていただけるほど解決したわけでもなく、今でも試行錯誤中です。しかし何度かこういう質問を受けた経験があるのでその度にどこの工場経営、いや、会社経営でもある問題のだろう、と思うようになりました。

 

私は会社経営なんてした事ありませんし、工場で働く事も初めてで、Factory 4F 担当でまさかこんな社員の意識を扱わなければ前に進まない仕事、ポジション、いわゆる大きな困難が待ちうけているとは想像していませんでしたが、よく見たらどんな業種、工場だから、というより組織として何かを動かす時に必ず出て来る問題であってそれこそが本質的に重要で解決しなければならない問題なのだろうと考えるようになりました。

 

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Factory 4Fというプロジェクトを行う事でむしろ浮き彫りになってきたというのが正直な所です。今まで小さいけれど放っておいた問題が出てきてる。いよいよ問題に向き合わなければならない時が来た、という表現がいいでしょうか。

 

よく言われることですが仕事を動かすのは結局は「人」です。このありふれた言葉がFactory 4Fの仕事を通してますます深く考察しなければならないと思うようになりました。

 

同時にちょっとした変化があると嬉しくてたまりません。

『そんなもんだ〜。何かを動かすには。だからあまり深刻になりすぎなくていいヨ。』後ろから小さな妖怪みたいなものが時々ささやいています。まぁ、何か新しいことを始める時はそんなもんなんでしょう。

 

ちょっとネガティブな内容の文章となってしまいましたがこういうことこそ多くの人と共感したいと私個人では思っております。外の方々が思うFactory 4F、篠原紙工、のイメージ、期待を崩さないように、しかし嘘はつかないで正直に今の自分たちを見せながら成長する工場、Factory 4Fでありたいと思っております。

 

Factory4F タブチ http://factory4f.com/