こんな製本屋さんが街にあったら
人からの紹介で流れるように行き着いた製本屋さん。
Wyvern (ウィーヴェン)と日本語で読むのが近いかな?
https://www.wyvernbindery.com/ どうやらウェールズ語のよう。
*街の中に自然に馴染んでる。それがいいですよね
ここでは日本人が働いているらしい、と聞いていたので少し安心感もありつつ飛び入りで入るとすぐさま日本人女性を発見。
日本語で「突然すみません....見学をしたいのですが...」と私が言うと
驚きつつも快く引き受けてくれました。対応してくださった日本人の香織さんは縁あって20年近くもロンドンで製本に携わっているそう。
お店の中は製本屋さんがしっかりと今現在も必要とされて街で仕事をこなしている雰囲気。どう表現したらいいかな....ふと思ったのが街の写真屋さんや洋服のお直し屋さんという感じ?
工房の中はお客さん対応の小さなカウンターもあるのですが、製本用の古い道具が至るところにあり、中央には大きな作業台、数々の紙や天井にはクロス、細々とした材料、どっぷりと製本の物に溢れていました。そしてスタッフ用の小さなキッチンもあり、彼らの日常も垣間見れてとても温かみのある空間でした。
Wyvernでは個人の製本依頼から本の修理、カスタマイズ、映画などに使われる小物としての本も作っていて、イギリスではこんなに需要があるのかと驚きました。
ポートフォリオ本1冊のオーダーなど割に合わない仕事を引き受けることも多いそうです。
スタッフやオーナーの様子を見るとただ単にお金のためだけにやっているようにはとてもじゃないけど思えません。それよりも、製本に対する愛と物を作り出すことに対しての喜びがあるように思えました。
私たちが見学している間もお客さんが頼んでいた本を取りに来たり、修理を頼みに来たり街の製本屋さんが動いていることに驚きました。対応しながらお客さんと日常のおしゃべりしたり、なんだか映画のワンシーンを見ているようでした。
スタッフの国籍や年齢も様々で一人一人が自分の分野を持っていて黙々とお仕事を進めていました。お昼になると作業台で持ってきたランチを食べていたりと篠原紙工の日常に近い雰囲気もあり、私の心の中では東京の仲間の顔が思い浮かびました。
工房を見渡すと私たちが見たことない技法の革張りの大きな本がありました。
それは昔、帳簿として作っていたそうです。ページ数も多い上サイズも大きいので本を開くと開いたページがちょうどいい角度で飛び出し見やすい仕掛けになっています。(言葉で説明するのは非常に難し...)
香織さん曰く、フランスとかだともっと繊細だけれどイギリスは作り方に大胆なところがある、とのこと。ヨーロッパでも違いがあるのがとても面白い。
イギリスは大陸ヨーロッパと違い、独特な思考方法があるのかもしませんね。
他のスタッフさんとも話す機会があったのですが、なんと日本に行った際に製本会社を見たと言って話をしてくれたところが私たちのよーく知る協力会社さんだったり...
世界は本当に狭いものです。
*香織さん、本当に貴重な体験をどうもありがとう。
オーナーのMarkさんも私たちが日本の製本会社から来たということに興味を持ってくれて、箔押し機の使い方のレクチャーから始まりコテの力の入れ方を指導をしてくれたり、ジョークも上手で笑いあるいい時間が過ごせました。
製本に興味のある人に対して寛容な心があり、とても話しやすい素敵な方でした。
前回の記事でも書いたけれど、ここでもやはり古い道具への愛情が溢れんばかりで道具を紹介する時に「私の愛おしい道具を紹介しよう」「これはかれこれ80年」などなど、ここには人間以外にもたくさんスタッフがいるようでした。
古道具屋などで見つけて買い足したりしているそうで、コレクターのようですがそれが自分の仕事に生かされてるって物にとっても幸せなことですよね。
Wyvernではロンドンで製本がどのように人々の日常に入り込んでいるかが感じ取れました。ロンドンも地価がどんどん上がっていて、経営を続けるのは厳しい現実もあるようですが、歴史と伝統を守るこの国では違う形で必ず継承されていくのだろうなと思いました。T
*本は特別な物として受け継ぐのではなく人に読まれて価値を発揮するもの、
これが僕の理念だよとMarkさんがおっしゃっていました。